第14話
思うことはいろいろとあったが、どれも口にすることができなかった。
それはノーレッジも同じなのだろう。
その目は、なにか言いたくて仕方がないという色で俺を見ていたが、結局なにも言わなかったのだから。
その後、二日間は何もなかったが、三日後に食堂に行こうとした時、また玄関の大きな扉が開いているのを見た。
――まただ……。
自分でもよくわからない恐怖心にかられながら扉を見た。
そして食堂に行き、ノーレッジを待った。
食事をとったりして、人間はこんな時でも腹が減るんだと思いながらノーレッジを待ったが、ノーレッジはついにその姿を現さなかった。
もちろん探したが、やはりというか予想通り、ノーレッジはどこにもいなかった。
その後は昼食を食べ、ミニ映画館で映画を見て、夕食をとり、風呂に入って本を読んで寝た。
次の日も食堂に行ったが、誰も来なかった。
その日はずっと本を読んで過ごした。
翌日も食堂に行った。
結果は当然と言えば当然だが、誰も来ることはなかった。
部屋に戻ってぼうと過ごし、なんとなくベランダに出た。
するとなんとしたことか、船着き場に乗ってきたクルーザーが停泊しているではないか。
慌てて部屋を出て、クルーザーまで走った。
クルーザーはすでに階段がおろされ、来るときに屋敷を案内した黒服が階段の一番下に立っていた。
俺は黒服に全力で駆け寄り、黒服の前で止まってぜいぜいあえいでいると、黒服が言った。
「どうしましたか?」
「みっ、みんないなくなった!」
すると黒服が、にまりと気味の悪い笑いを浮かべた。
「知ってますよ」
「知ってる?」
その時、後ろからなにか固いものが地面を連続してたたくような音が聞こえてきた。
振り返るとそれがいた。
ほぼ象くらいの大きさで、人間とも動物ともつかないその顔は、大きな目にいびつな鼻、そして両端まで裂けた大きな口には長い牙が上下に生えていた。
ごつごつした黒光りする身体は、一言で言うと肥大した蜘蛛だ。
八本ではなく六本の細く長い脚があり、足の先には長い角のような爪がある。
あまりのことに俺が固まったままそれを見ていると、黒服が言った。
「牛鬼です。私のご主人様がこの島で飼っています。えさは人間ですね。もう七人食べました。あなたで八人目ですね。昔はえさの人間を集めるのが大変でしたが、最近はネットを使えばわりと簡単に集まるようになりました。ありがたいことです」
黒服がそう言い終わると、待っていたこのように牛鬼がその巨体からはし信じられないほどの速さで俺に迫ってきた。
数日後、ネットに一つの広告がうたれた。
「ネット依存症でお悩みのあなた。ネットが使えない島でしばらく過ごし、ネット依存症を克服してみませんか。住居と食料は提供します。着替えなどの衣類は、下着も含めてそちらでご用意ねがいます。このツアーはボランティアにつき、参加料は無料です。みなさまのご応募をお待ちしております。
ボランティア団体 カウ」
終
カウの島 ツヨシ @kunkunkonkon
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