図書館で借りた「星の王子さま」を読んで。

「私、星の王子さまの部分には納得いかないの」


 学校の帰り道、彼女はそう不満げに呟いた。


「こんなにもピュアな小説だってのに。そう思う箇所なんか見当たらないと思うが」


「だって、バオバブもヒナゲシもよくない比喩ひゆに使われているじゃない。植物だからと言ってさげすむなんて」


「そういう捉え方も出来るか……。でも他にどう表そうというんだ?石か?土か?水か?多分どれもしっくりこないだろう」


「それはそうだけど……」


「なら、人間を使おうか。同種族なら全責任を僕達が負うことになる。例えばしわくちゃなお爺さんとかさ……」


「私はそっちの方がいい」


 間髪入れず彼女はそう答えた。

 これは少し危険な気がする。僕はそう直感してもう少し考えを巡らせてみた。


「でもさ、考えてみようよ。僕達が人間で足り得るのは互いを認め合っているからだろう?考えてみれば、植物や動物にも名前が付いているじゃないか。僕達はこれを一方的に認めているんだ。片想いみたいに」


 僕がそう言うと、少女は耳を赤くした。

 なんだ、彼女はまだこんなにもピュアじゃないか。気に病む必要はなさそうだ。

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アマイロガラス ARuTo/あると @IIARuToII

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