大衆が彼女に抱くイメージについて。また、僕の考えについて。
「なんで?なんで君は人の容姿を言葉で表したりしないの?」
「意味のない事だからだ」
「【飴細工】も【お人形】さんも褒め言葉ではないの?」
彼女は言葉の裏返しを期待し、こんな質問している訳ではないのだろう。探究心に満ちた声がそれを端的に表している。
「違うな。それは単なる"所有欲"だ。君を所有したい、どこかに飾っておきたい。そういう気持ちがあるから、そんな言葉がでるのさ」
僕は傘をさしながら、足早に歩いた。「反吐が出る言葉だ」と、捨て台詞を吐いて。
彼女は忠告されても尚、僕について来た。本当に好奇心が旺盛なお嬢様だと思う。最低限の返答をしていた三ヶ月前とは大違いだ。
「変わってる。変人。変態。この言葉も同じ意味として捉えた方がいいのかな」
「何故そうなる……」
記憶が確かなら僕は少なくとも三回、彼女に"変わっている"と言われていた筈だ。流石の僕も変態という言葉には気が障る。
「だって君の考えを聞いていると、"似たような言葉を一つに集約した方が効率が良い"そんな事を言っているような気がして」
彼女は小さく微笑んだ。
僕はそこまで打算的ではない。そのような考えを持っていたら、絵なんか描いていない。絵は非効率的で曖昧な事を好む、感覚人間のする事だ。他意はない。本当のことだ。
「自分でもよく分からないけど、とにかく着飾ることだけはしたくないんだ」
僕は前方を見据えて、決意するように言った。
「理解しました。だから髪がボサボサで物事に動じないのですね」
彼女はなんの嫌味もなく歯切れの良い言葉を口にする。
「悪かったな」
「いえ、美しいと思います」
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