(終)4−3

あれから数日後。この日、照屋カンパニーに人だかりが出来ていた。


警察が厨尾元工場長を始め、行方不明になった社員達の捜査をしていたのだった。

もっぱら照屋社長親子は体調不良を理由に現在入院中であるが‥会社の前でそんな騒ぎを目にしながら、社員の主婦達は囁き合った。


「あの娘の言う通りだったねぇ。この会社、本当に悪い事してたんだ」


「アカナちゃん‥今頃どうしてるのかしら」


そう思いを馳せながら、すでに念頭には無く帰宅しながら違う話題を始める彼女達。この状況を人知れず笑っている女の事も知らず‥





篁はかつて沙葉と歩いた道を息子の葉也と歩いていた。


いつもと同じ街、晴れた青空から並木道の柔らかな葉と光を背景に二人の足取りはぎこちなかった。


『‥こいつ、咲ちゃんと居る時は素直なくせに、俺と居る時はにこりとも笑わない』


篁が心の中で愚痴りながら言葉を出した。


「‥そう言えば葉也、今度持っていくお弁当、魚フライはタルタルソース、シュウマイは醤油、卵焼きはマヨネーズをかけて、唐揚げはそのままだったな」


「違うよ、唐揚げもマヨネーズだよ」


「あっ、そうだったか。すまない」


「しょうがないなぁ」


そう言って取り出した葉也に篁は微笑むと、二人は同じ道を歩き出した。





アクセレカンパニーエイ市支部から出たアリア、街に出て暫くするとスマホを手にし画面を除いた。


 アリア、私斗川さんの専属の秘書になったのよ。


サリィからのメール。アリアは手早く返信する。


 そう、頑張ってね、サリィ。



スマホから目を離すと遠くから追いかけて来た僕に言った。


「サリィからよ」


「あれから彼女たちと会っていないけど皆んな元気かな」


「三条さんと咲さんの結婚式には皆んな来るでしょ。それより早く行かないと、三条さん達が待ってる」


アクセレカンパニーはこの日もいつも通り仕事だった。そう言って行こうとするアリアを僕は呼び止めた。


「ア、アリア‥」


立ち止まって振り返る彼女に僕は言った。


「あの‥僕、鶫は嫌だと言ったけど、今は違うよ」


「そうなの?」


「だってこんな鳥だから花の元に行ける。す、好きな人の所に飛んで行けるから‥」


照れるようにそう言うと、彼女はそっぽを向くように僕の背後に背を向けた。


「アリア‥」


群青色の空の下、二人は初めて会った場所で重なった背を向けたまま、指先が触れると互いに握り合う。


挿絵(近況ノートより)

https://kakuyomu.jp/users/mira_3300/news/16816927862435984018


僕の物語は終わりを遂げた。有り得ないファンタジーの戦いだけど、世界の平和を願って‥

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変華闘記イクアージョン 嬌乃湾子 @mira_3300

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