第20話 悪魔の頼み


ツカサは声をかけてきた悪魔に敵意がなさそうだったので、一応刀を結晶に戻した。


「我の名はフォルネウス、戦う気は無い、交渉しにきただけだ。」

ツカサはサタナキアが大人しくしているのでそのフォルネウスという悪魔はリーダー的なやつなんだろうか?と推測をする。


「へぇ?俺がなにをすればなにをしてくれるんだ?」

ツカサは近づいてくるフォルネウスに怖じける様子もなくそう聞く。、


「我らが願うのは、大罪を背負い今は封印されているベルゼブブの消滅だ。対価はなるべくそちらの希望を沿おう。」

ツカサはフォルネウスから出てきた名が、とても有名どころの悪魔だったため、少し声を出しそうになるが耐えきった。


「それはここに来るまでにやってきたことを封印されている奴にやってやればいいんだな?」

ツカサは内心簡単なことだと思った。

しかしわざわざ同族を殺したものに頼むということは他にできるものがいないということでもあるので、対価は大きく出ても通ると考えた。


あぁ、と答えるフォルネウスにツカサは対価を告げる。

「場合によるが何体かの悪魔の魂を半分もらっていく。半分だから悪魔だし死ぬことはないはずだ、弱くなると思うけど。」


フォルネウスは少し苦い顔をしたが、渋々その条件を飲んだ。



――――――――――――――――――――



しばらく走りツカサとフォルネウス、そしてフォルネウスについてきた悪魔は目的地に到着した。


そこには全てが黒い材質でできている立派な巨城が立っていた。

ツカサがその城のあまりの造形美に対価を変えてこの城をもらうのもありだな、と考えるほど黒い城は美しかった。


「場所を案内する。ついてこい」

フォルネウスは先導して黒い巨城の中に入っていく。

ツカサは一瞬罠の可能性も考えたが、その時はその時と気にせず入ることにした。


入り組む通路を歩いていくと、少しずつ思わず足を止めてしまいそうな嫌な魔力が強まっているのを肌で感じた。


そして長く続いた通路から一変、ひらけたホールのような場所にたどり着くと中央に身体中に剣が突き刺さった禍々しい見た目の悪魔が岩に貼り付けにされていた。


「これが大罪を犯した者、ベルゼブブだ。」

フォルネウスは僅かに憎しみを込めた目でベルゼブブを見たままそう言った。


「こいつは何の罪を犯したんだ?」

ツカサは何となく聞いて見た。

神話で何かの罪を象徴するのがベルゼブブだったのは覚えていたのだが、その先が出てこなかったからだ。


フォルネウスはツカサの質問に少し考え込むもゆっくり口を開いた。


「これは恐らく1000年以上前の話になるのだが、当時悪魔の中で最も力を持っていたと言われていたのがベルゼブブだった。

悪魔大王の座が空席になって既に何千年も経っていたが、ついにその座が埋まるのではないかという話も出ているほどだった。

しかしそんな時事件は起きたのだ。


ベルゼブブはいつも通り他の悪魔と戦いに勤しんでいた。しかし突然頭を抱えて悶え始めたのだ。

悪魔はほとんど痛みを感じることはないし

ましてや頭痛など起きるはずもない。

誰もが知る常識の中、ベルゼブブは数十分苦しみ続けた。


そして立ち上がった時には既にベルゼブブという存在は崩壊していた。

瞳の色は変わり、正気を失い、近くにいる者たちを喰らい始めたのだ。


下位悪魔ならともかく、上位悪魔、さらには最上位悪魔すらも永遠に復活できず消滅させられら事態となった。

当時はなにが起きてあるのか分からなかったが、今では分かる。

魂を食べられていたのだ。


ベルゼブブはその後も同族を襲い続けた。

普段は協力することのない悪魔たちだったがその時ばかりは力を合わせたのだ。


そして何とか封印し、今に至るというわけだ。

そして今ではベルゼブブの罪の名をこう呼ぶ。」


ツカサはそこまでフォルネウスの話を聞いたところでベルゼブブとは何の罪を表してあるのかを思い出した。


「「暴食の罪」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪名高き仲良し夫婦(改訂版) @edamameryori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ