第19話  化け物による化け物の蹂躙


ここ悪魔が住む世界には、階級に分かれ悪魔が存在する。


一番下が下位悪魔、知性がなくただ暴れまわることしかできないまさに下級といったところだ。


そして次に上位悪魔、知性はあるが言葉を使うことができない。

同じ上位悪魔でも古くから存在する悪魔と下位から上がったばかりの悪魔では比べ物にならないほどの力の差が存在する。


そして悪魔たちの頂点に立つのが最上位悪魔、ここまでくると体はスマートになり魔法の扱いが格段に上昇するとともに言葉を使えるようになる。

ここでも古参の悪魔と上がったばかりの悪魔では天と地ほどの差が存在する。


その例がウァプラとアロケルだ。

しかし最上位悪魔にも欠点がある。

それは人が住む現世に行くことができないのだ。

いや正しくは最上位悪魔を呼び出すほどの技量を持った人間がいないだけであったが。


なにであれ、圧倒的な力を持つ十数体の最上位悪魔たちは自らに危険が及ぶなど同族での戦いでしかあり得なかったことであった。


ツカサ、という名の人ではない何かが現れるまでは。


そしてツカサによる惨状はある程度知性を持った悪魔が自分たちよりも上の存在へと伝えていき、ここ何百、何千年と退屈をしていた悪魔たちの耳にも届くこととなった。



そして悪魔たちの世界は<悪魔大王>が死んだ日から続く数々の小さな争いしかない日々が、

突如として悪魔すらも自らの存在を賭け消滅という形の死が隣り合う戦いの日々に大きく変わることとなる。


――――――――――――――――――――



ツカサがアロケルと戦っていた時、悪魔界には混乱が渦巻いていた。


その元凶はもちろんツカサである。

ツカサは下位悪魔では相手にすらならず、上位悪魔の魂を次々と喰らい暴れまわっていた。


そこにツカサも思わず手を止め、視線を向けるほどの存在感と威圧感を放つ悪魔が降りたった。

その悪魔の横にはツカサが逃してしまったアロケルが佇んでいる。


「サタナキア様、あれが今回の混乱を招いているものです。既に始祖の魂を引き継ぐサタナキア様ほどの力がないと殺すことはできないかと」

サタナキアと呼ばれる厳つい顔ををした大男に話しかけるアロケル。


戦いの記憶が次々と蘇っているツカサにとってある言葉しか頭の中に残っていなかった。

「始祖の魂を引き継いでんのか?それは是非とも喰わせて欲しいもんだ。」


獰猛な目で笑うツカサに対してアロケルが反論する。

「最上位悪魔よりも更に上の存在、悪魔の王たる器であるサタナキア様にお前ごときが叶うわけないだろう!」


ツカサはそう叫んでいるアロケルを見て急に雑魚キャラっぽくなったなー、と考えたりしていた。


一通りアロケルが話し終わったところで、サタナキアが動く。


サタナキアは1秒未満で半径10メートルほどの操作領域を作り出し、ツカサの後ろに瞬間移動した。


ツカサは初見だったので全くなにが起きたかわからなかったが、体の周りにフワフワと浮かんでいる水晶がサタナキアの振り下ろした剣を防いだ。


「むむ…まさかこれを防ぐとは、油断ならない相手だ。」

サタナキアは再び剣を構える。


ツカサは顔には出さなかったものの、内心は僅かに砕かれたいくつかの水晶を見てヒヤヒヤしていた。

「魂を片っ端から食べまくっといてよかった

、まだまだ全盛期のように完璧な白水晶を作れないな」

ツカサも白水晶で作られた刀を構えた。


先に動いたのはサタナキアだった。

やはり瞬間移動をし、ツカサの視界から一瞬で消える。


ツカサは再び反応できずに、体の周りを浮遊している白水晶で受け止めた。

「さすがに反則すぎないか?」

ツカサは急いで後ろに刀を振るが既にそこにはサタナキアの姿は無い。


ツカサがもう少し広めに操作領域を広げることができればサタナキアはツカサのすぐ近くに転移できなるのだが、サタナキアの操作領域の魔力濃度が高すぎて今のツカサには半径2メートルの操作領域が限界だったのだ。


あらゆる角度から襲いかかる剣と凶悪な魔法。

ツカサはサタナキアの戦い方に翻弄され続けた。



剣を交えること数十回、


ツカサの狙い通りサタナキアの剣がボロボロと崩れ落ちた。

ツカサは顔を歪めて笑った。

サタナキアは突然の出来事に思わずほんの一瞬膠着する。

「これで、終わりだ」

ツカサがその隙を見逃すはずがなく、刀を横に振り首を斬ろうとした。


しかしツカサの足元の地面が僅かに盛り上がったことで刀は空を斬る。

「は?」

ツカサは自分の目を疑った。

自分の操作領域であるはずの地面がただ盛り上がっただけとはいえ、使のだ。



「サタナキア!剣を引け!まあ既になくなってるみたいだが。そこの者もどうか我らの話を聞いてほしい。」

よく当たる声で少し離れた岩山から話しかけてきたのは、またまたやばそうな雰囲気しかない新たな悪魔とその悪魔に従うように飛んでいる何体かの悪魔だった。


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