第18話  悪魔が蔓延る世界


ツカサは気づくと地獄のような場所にいた。


それは黒々とした雷雲で満たされ、地面には草木一本生えていない。

しかし所々から吹き出るマグマで、周囲は明るく照らさらていた。


「ここが悪魔の世界なのか?」

ツカサは一応疑問形にして見たものの、門から感じた禍々しい魔力をあちこちから感じたので、ここは門の内側だと確信を持っていた。


その証拠に先ほど殺した悪魔に似た見た目の怪物が、盛り上がった岩の上からツカサを見下ろしていた。


「ガアアァァー!!」

その悪魔はただそうわめき散らし、一直線にツカサに襲いかかる。


ツカサは迫る爪を刀で逸らし、くるりと体を回転させるとその遠心力のまま悪魔の心臓ごと胸のあたりを深く切り裂いた。


「ふぅ、これはもしかしたら死ぬかもなぁ。いや死ぬわけにはいかないな。」

ツカサは愛する恋人の顔を思い浮かべ、先ほどの悪魔の声につられてやってきた何体もの悪魔を見据えて刀を構えた。



――――――――――――――――――――


いつまで経っても雷雲の晴れることのないこの世界では既にツカサの体内時計はなんの仕事もしていなかった。



ツカサはただ無心で襲いかかってくる悪魔を殺し殺し殺した。

周囲には死体が積み上がり、地面は血の池が出来ていた。


ツカサは無心で戦っているうちに使える魔法の幅も広がった。

ツカサ自身は取り込んだ<死神の骨>とやらの力と推測したが、その魔法がツカサを物量差による敗北という結果から救ったのは事実だった。



身のこなし、魔法の連続使用に使い分け、動体視力の向上。

ツカサの体は死と隣り合わせの時間を過ごすことで明らかに強くなっていた。



そこに新たな絶望が舞い降りる。

「君がその世界に迷い込んだ異端者か」

そう話しかけてきたのは黒い翼を背中から生やした、青年に見える悪魔だった。


その悪魔は今まで悪魔と違い言葉を交わすことができ、しっかり知性を持っていた。

そしてとてつもないプレッシャーも纏っていた。


「まさかこんな地獄に話が通じる奴がいるとは、驚きだ」

ツカサは久々に言葉として声を出した。


しかし帰ってきたのは全方位からの黒い槍。


たまに理性なき悪魔が使っているのを確認しているのでツカサもその魔法の脅威を知っていた。

物が消滅するのだ。


実は悪魔たちに闇魔法と呼ばれる魔法は、人でいうところで回復魔法の1つ「浄化」と呼ばれていたりする。

要は菌を消滅させるか万物を消滅させるかの違いだったりする。


ツカサは次々と飛んでくる即死の槍を避けていく。

そして避けるついでに光速の矢や物量のある岩の槍を針を通すように放っていく。


知性を持った悪魔は飛んできた魔法を舞うように避けた。

「まさかここまでとは!せっかくだから名乗っておこう。僕は最上位悪魔が1柱、ウァプラさ」

ウァプラは心底楽しそうに名乗った。


ツカサは内心冷や汗が止まらなかった。


こんなやつもう一人増えようもんなら余裕で死ねる


これがツカサの内心である。

しかしフラグは例え不幸なものでも回収されるもの。


どこからかもう1つの本能が警鐘を鳴らすレベルの化け物の気配が近づいてきた。


「ちょいちょいちょい、何かって面白そうなことしたんだー?」

今度は金髪の長髪を持つ男の悪魔が乱入してきた。


ウァプラはその男を見るとあからさまに嫌な顔をする。

「これは僕のものだ。横から入らないでく…」

ウァプラが男に向けそう言いかけた時、ウァプラの四肢が吹き飛び、ツカサの足元まで転がってきた。


「おいおい、誰に口聞いたんだ?つい最近最上位になったばかりの新人さんよ?しばらく体が復活するまでおねんねしとけよ」

その2人には誰が見ても分かるほど大きな実力の差があった。


「アロケル…貴様ぁっ」


しかしツカサはアロケルと呼ばれた男のことよりも目の前で弱っているウァプラに注意が引かれていた。


ツカサが見ているのはウァプラの体ではない。

その先にある<魂>だった。


ツカサはそっとウァプラに歩み寄ると体の真ん中に腕に突き刺していく。

「な、何を…やめ、やめてくれぇ!」


ウァプラはそう叫ぶがツカサはそのまま腕を深くに突き刺していく。

そしてちょうど20センチほどツカサの腕がウァプラの体に刺さったところでツカサは本来触ることができないはずの、そして悪魔の命の源でもある<魂>を引きづり出した。


「っ!!……あ、ぁ…」

ウァプラはそのままなどと動くことはなくなった。


そしてツカサは引きづり出した魂をそのまま喰らった。


その瞬間、ツカサは日本で過ごしていた時にはあり得ない戦いの記憶と力の一部を思い出した。


「そうだった、それにしてもなんで忘れてたんだ?まあ今はあの魂が欲しいな」

ツカサは先ほどまでのアロケルへの恐怖心はどこかへ行き、今まで忘れていた自らの力を行使する。


氷室権能ひむろけんのう・白」

その言葉を鍵としツカサの周りには白い水晶のようなものが浮かび始めた。


氷室権能は他から魂を取り込み、その魂を自分の魂と同期し同期した魂を結晶化することで操作領域も無しに何者にも壊すことができない物質を自在に操る技である。


「精神生命体の悪魔を簡単に殺したと思えば、何やら不気味な魔法まで使うとは…」

アロケルはそこまでいったところで三日月のように笑った。

「楽しめそうだ」


その瞬間アロケルの姿は消え、ツカサの真後ろに現れた。


しかし回り込んだと同時に、魔法で火を纏ってツカサに叩きつけた腕は一瞬で凍りつき細胞が死に腕が取れた。


アロケルは腕を再生しながら言う。

「さっきまではウァプラといい勝負をしていた程度だったというのに、突然ここまで強くなるとはさっきウァプラを完全消滅させたのと関係があるのかい?」


ツカサは不気味にニヤリと笑う。

「ご名答だ」

そう答えたかと思うと振り向くことなく腕を後ろに伸ばした。


「アガッ、え?嘘…でしょ…あり、え、ない」

そこには気配を消し接近していた女の姿をした上位悪魔がウァプラと同じように魂をツカサに喰われ消滅した。


「うん、ここの奴らは格別の味だ。次はお前の番か?アロケル」

そう言いながらアロケルに近づくツカサ。

アロケルは自然と後ろに下がり、ツカサと距離を取る。



いつの間にかアロケルは狩る側ではなく狩られる側に回っていることにまだ気づいていなかった。










そういえばツカサとヒメナの身長とか設定してなかったと気付いた今日この頃。


ツカサは182センチ


ヒメナは165センチでいきます。


理想の身長差より僅かに差大きめです。

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