一度だけの再会
勝利だギューちゃん
第1話
「何やってんだ?俺・・・」
俺は今、夜景だけが売りの高級レストランにいる。
本来は、俺には不似合いの場所だ。
こういうムードが売りの高級レストランは、俺のような陰キャラは似合わない。
周りの白い目が突き刺さる。
その俺が、どうしてここにいるのかというと・・・
「大和くん?」
その声に顔をあげる。
「柏木さん?」
「うん。久しぶりだね。ごめんね、いきなり・・・」
「いや・・・いいって・・・」
柏木奈美。
高校時代の同級生。
卒業後は疎遠になっていた。
その柏木さんと、どうしてここにいるのかというと、
俺も仕事で、このホテルに宿泊している。
柏木さんも、偶然いたらしく、俺を見かけて声をかけたそうだ。
「代金は、私が持つから」
「・・・頼む」
「・・・うん」
柏木さんは、そう言うと俺の向かいの席に腰を下ろす。
「じゃあ、まず乾杯しようか・・・大和くん」
「ああ」
「乾杯」
「乾杯」
「大和くんは、立派になったね。正直信じられない」
「俺もだ」
「独身なの?」
「オフコース。柏木さんは?」
「私?私は・・・」
柏木さんは、グラスをテーブルに置く。
「・・・因果応報っていうのかな・・・」
「因果応報?」
「うん・・・私、高校の頃、浮気ばかりしてたじゃない?」
「確かに、ころころ変えてたな」
「うん。大和くんには、今でもひどいことをしたと思ってる」
柏木さんとは、一度だけデートの約束をした。
でも、同じ日に他の人から誘われて、俺をドタキャンしたんだな・・・
「あの時は、さすがに恨んだよ」
「仕方ないね・・・でも、浮気癖は治らなくて・・・」
「うん」
「今では、すっかり・・・」
とても、後悔しているように見える。
でも、正直な話、柏木さんと仲良くできるかというと、答えはNOだ。
「柏木さんは、今何しているの?」
「卒業後と同じだよ。旅行会社勤務」
「たまたま、居合わせたのか・・・」
「神様も、粋なことをしてくれるね・・・」
少しの笑みを浮かべる柏木さん。
「大和くんの活躍は、耳にはいってるよ。周りに自慢してるんだ」
「そう・・・」
俺は普段は、背広は着ない。
着る職業ではないからだ。
今日は、いとこの結婚式でここに来た。
参加予定はなかったが、どうしてもとのことだ。
「大和くん」
「何?」
「もし、許してくれるのなら、今から出かけない」
「今から?」
「うん。遅くなったけど、埋め合わせがしたい」
俺を見つめてくる。
「即答すると、答えはNOだ」
「NO?」
「申し訳ないが、柏木さんとの過去は封印した。もう開けたくない」
「・・・そう・・・ごめんね。そうだよね、忘れて今の話」
少し悲しそうな顔をする柏木さん。
「じゃあ、仕切り直し。今だけは、たくさん話をさせて」
「うん」
「大和くんの仕事の話とかも、聞きたいし」
グラスを差し出す。
「改めて、乾杯
「乾杯」
一度だけの再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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