ダボダボ【なずみのホラー便 第92弾】※お食事中の方、注意!

なずみ智子

ダボダボ ※お食事中の方、注意!

 愛らしい小動物系のルックスのみならず、ちっちゃくて華奢なスタイルにも相当な自信を持っているマナは、普段のコーディネートにおいても自分の可愛さを最強に生かせるものを選んでいた。

 そう、だから、ダボダボ。

 ニットしかり、セーターしかり、トップスはわざとワンサイズ上のものを選び、小さな手で袖口をキュッと掴む。

 さらに、うるうるの上目遣いをプラスだ。

 え? あざとい?

けれども、マナは周りにどう思われようが、小動物系女子の頂点にいるであろう自分だからこそ最強に似合うトップスのシルエットであると、ダボダボを貫き通していた。


 彼氏との久しぶりのデートとなる今日も、マナは買ったばかりのオフホワイトのダボダボニットで挑んだ。

 路上でひとしきりイチャイチャした後、マナと彼氏はカフェへと入った。


 ……だが、席についてから間もなく、マナの体に異変が起こり始めた。

 濃厚なコーヒーの香りに刺激されてしまったのであろうか?

 便意。

 それもかなり強烈な便意だ。


「ちょっとお手洗いでメイク直してくるね。大好きな人の前では、女の子はいつだって綺麗で可愛くいたいんだから(ハート&ウインク)」

 引き攣った笑顔で誤魔化しながら、マナはトイレへと直行した。

 

 一刻も早く、ウンコを出してしまわなきゃ。

 グルグル鳴り続けるお腹を抱え、便座に腰掛けたマナであるも、なかなか出てこない。

 体内の”大蛇”は出口にまで辿り着いているも、その出口が何か硬い物でふさがれているかのような感覚だ。

 大蛇は暴れ狂い、マナにじっとりと脂汗をかかせるばかりであった。


 早く、早く、出て。

 あまり遅いと、ウンコしているんじゃないかって彼氏に怪しまれちゃうよ。

 いや、実際にウンコしてるわけだけど、私みたいに可愛い女の子がウンコしている姿なんて彼氏に想像させたくないよ。


 マナの切なる祈りが通じたのか、パォン!とラッパのごとき放屁を皮切りに、マナの大蛇は外界へと放出され始めた。

 正確に言うなら、もはやそれは大蛇の形は留めてはおらず、外界の受け水へとダボダボと落ちていった。


 良かった、やっと出た。

 でも、こんなにたくさん出るなんて思わなかった。

 そんなことより、早く戻らなきゃ。


 マナは、オフホワイトのダボダボニットの袖をまくり上げる時間も惜しみ、オフホワイトのトイレットペーパーを利き手に巻きつけ、ガシガシと拭いた。

 そして、手をパパッと素早く洗い、すっきり爽やかな顔で彼氏の元へと直行した。


 席に戻ったマナを見て、彼氏はギョッとしたばかりか、鼻をヒクリともさせていた。


 え?

 私、何か変?

 いや、違う。

 ちゃんと綺麗に拭いたはずなのに、なんだかまだうっすらと臭ってるような……


「……なあ、お前のその”袖口に付いている”のってウンコ? 手ェ洗っている時に、普通気づかねえ? もしかして、ウンコの後、いつも手ェ洗ってねえの?」



(完💩)

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