メリーさんの怪奇事情 私メリーさん、今何かが後ろにいるの。助けて!

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 私メリーさん。


 ホラー小説とかで良く出てくる、おっかない子。


 だんだん、被害者に近づいて行って「今、あなたの後ろにいるの」ってやった後に、人を脅かすのがお仕事。


 これまでに百人くらい脅かしてきたわ。


 大人も子供も、老人もね。


 みんなみんな、ほんとうに滑稽なくらい驚いてくれたわ。


 だんだん近づいていく私に取り乱していく人達。


 泣き叫んで、恐怖で気絶したりんなんかしちゃって。


 その様子ったらおかしくてたまらないの。


 でも、こういうお仕事してるとたまーに、変な人がいるのよね。


「私、メリーさん。今あなたの部屋の前にいるの」

「はぁはぁ、メリーたんが俺の部屋の前にいるんだって。うひょぉぉぉう!」


 こういうのとか。


 ちょっと個性的すぎるから、私が真後ろに立ってもまったく驚かない。達成感がないのよね。


 だから、もうぞんざいに「私、メリー(略)後ろにいるわ。じゃあね」さっさと終わらせるに限る。


 職務怠慢だって?


 私が所属している怪奇現象クラブにはノルマってものがあるのよ。


 一か月の間に、脅かさなきゃいけない人間の数が決まってるんだから、望みがない人間にわずらわされている暇はないのっ。


 でも、まだ今日のはマシな方よ。


 ごくごくごく、たまーにいるのよね。


 関わっちゃいけないガチな人が。


「私、メリー「あはははははぁ、獲物みぃぃぃつけたぁぁぁ!」きゃぁぁぁぁぁ。でたぁぁぁぁ!」


 お化け退治?

 エクソシスト?

 お祓い屋?


 違うわよ。


「お化けってまだ殺した事ないの! ねぇ、待って一緒に遊びましょ!」


 ちょっといっちゃってる人よ!


 まともな思考を持ってる人は、罠にはめたり、他のお化けと連携して撒いたりできるけど、これは無理!


 だって、思考が読めないものぉぉぉ!


 壁とかのぼってくるし、下水使って先回ししてるし、腕とか一本折れててもかまわず追いかけてくるし。


「きゃはははは!」

「ひぃぃぃぃ!」


 私は泣く泣く、以前「メリーたんきたぁ!」とか言ってたオタクに連絡を入れる。


「私、メリーさん。今変なのが追いかけてきてるのぉぉぉ! すぐ後ろに何かがいるのぉ! 助けてぇ!」


 えっ、お化けのくせに人を頼るのかって?


 時と場所と場合と戦力差を考えて。


 あんなのお化けでも敵わないわよ!


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