第30話 使い魔
「魔女じゃない……。あれはモンスター?」
私はシスター・テンペストの張ってくれている結界に、体当たりをしている存在に目を凝らします。それは明らかに魔女ではありませんでした。どちらかと言えばカラスのように見えます。
「野生のモンスターはダンジョンにしか居ない。この感触は魔女の使い魔。でも低級」
シスター・テンペストが外を見もせず教えてくれます。どうやら結界の奇跡を通じて外を把握できているようです。
「使い魔は、放っておくと、魔女を呼ぶ」
シスター・テンペストがそういった時でした。
窓の外を横切る騎獣の影。
それは騎士ネリムと彼女の乗るモンスターでした。
先頭を見るとマザー・ホートが一人で道を切り開いています。その間に騎士ネリムが結界の縁へと近づくと背中から何かを引き抜き、振り回します。
それはモーニングスターでした。
先端についた鉄球を騎士ネリムは軽々と振り回しています。
そのまま繰り出された鉄球が、使い魔をとらえます。
一撃でした。
鮮やかな手際に称賛していると、御者をしているシスター・マハエラから声がかかります。
「遅かったみたい。気をつけて。魔女が来た」
その声に、私は窓から身を乗り出して確認すると、後方から三体の魔女が走ってくるのが見えました。
「シスター・マハエラ。私にやらせて下さい」
光の盾を飛ばして枝を切り落とした事を思い出しながら、私は志願してみます。
緊張が緩んでしまいそうなので、その時のルルノア達の姿は努めて思い出さないようにします。
「……わかったわ。気をつけて」
「シスター・テンペスト、少し行ってきますね」
私はシスター・テンペストに声をかけると、乗り出していた窓枠に体を押し込みます。
──ギリギリ。だけど通れる!
私は肩が少し引っ掛かりかけますが何とか窓枠を通り抜けるとそのまま枠に足をかけ、天井へとのぼります。
その間にも馬車へと近づいてきた魔女たち。その腕を結界へと叩きつけています。
結界はバチバチと音を立ててはいますが、微塵も揺るぎません。
私は落ち着いて馬車の天井で膝をつくと、奇跡を祈ります。
すぐさま自分自身の中に感じられるざらりとした気配。
溢れだした気配がすぐに光の盾へと、形作られます。
「神よ。ラーラ神よ。どうかその奇跡をお示し下さい。神敵たる彼女たちを滅する奇跡を」
私はこれから試そうとしていることが上手くいくように、真円のその光の盾に呟くようにして祈りを捧げます。
すると次の瞬間、真円だった光の盾が三つに分裂しました。
それを、驚いて見ていると、私の腕から、その三つの光の盾の欠片が、ゆっくりと浮かび上がります。
くるくると回転し、そのまま別々の魔女へと向かって行きます。
私の意識を完全に離れて動くそれら。飛び出した円の欠片のうち、二つは魔女を真っ二つにします。
黒い闇を撒き散らし崩れ落ちる二体の魔女。
残り一つは魔女の両足を切り飛ばします。
倒れ込む魔女。
そして欠片に別れていた光の盾が一つにまとまりながら、私の腕へと戻ってきます。
その間も進み続ける馬車。すぐに、倒れこんだ魔女は見えなくなってしまいます。
──これはもしかして、新しい奇跡だったのでしょうか。自分で盾を飛ばして枝を切ったのとは、まるで別物です……
私は不思議に思いながら、馬車の中へと戻りました。
副業聖女は勝ち組でした~私を体力だけのノロマ女戦士とバカにしてきたパーティーメンバー、仕事が無くなり困窮。聖女の副収入はマジ神です。 御手々ぽんた@辺境の錬金術師コミック発売 @ponpontaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。副業聖女は勝ち組でした~私を体力だけのノロマ女戦士とバカにしてきたパーティーメンバー、仕事が無くなり困窮。聖女の副収入はマジ神です。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます