ウィークエンド ラン
生田 内視郎
ウィークエンド ラン
冷たくなった新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込み、頭の中の眠気を追い出す。
土曜日とはいえこんなに早朝だと、まだ小鳥の囀りさえ聞こえてこない。
いつものようにストレッチで縮こまった体を伸ばしたら二、三歩その場で足踏み、ゆっくりと走り出す。
最初は脚より腕に意識を集中して、振り子のように短く振るう。
腕の振りに足がついてくるようになったら、後はペース配分も考えずひたすらに腿を上げる。
針のように肌を刺す空気の冷たさも無視し、アゴを引いて鼻呼吸を短く繰り返す。
途中の信号も交差点も無視して全力で駆け抜けた。
口から漏れた息が白い湯気となり霧散していく。
走っている間は頭が真っ白になって、自分のいい思い出も苦い経験も、全てがこの息のように膨らんでは消えていく。
週明けに始まるテスト期間のことも
喧嘩したままの友達との関係も
最後の大会で代表選手に選ばれなかった悔しさも
好きだったあの白い砂糖を塗したレモンケーキの味も
明日、世界が滅ぶことさえ
今の私には些細なことだ。
明日、世界が滅ぶとしてもリンゴの木を植える人がいるように、私は今日も、早朝のランニングを欠かさずにいる。
ウィークエンド ラン 生田 内視郎 @siranhito
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