4日目「挨拶」

「トイレ借りていいですか?」


「あ、どうぞー」


危ない、ぼーっとしていた

例えコンビニのアルバイトとはいえ、お金を貰っている以上しっかりそれに見合った仕事をしなくては。


まぁ、これから朝の通勤ラッシュなので

ぼーっとする暇があるのも今のうち、気を休めることも必要かもしれない。


案の定これから仕事といった風体の大人達が続々と入店し、缶コーヒーやら新聞やら朝飯やらを買っていく。


そうは言っても顔馴染みの常連客ばかりの田舎店なので差し当たった問題も無く、接客というより作業のようにレジ打ちを済ませる。


ラッシュと言っても30分程度そろそろ余裕も出来てきた


「んっ、、」


伸びをして体の強ばりをほぐす


「、、すみませんお願いします。」


コトッ

缶コーヒーが置かれる


やべ、見られてた、、てへ


「あ、ごめんなさい、ありがとうございます。」


さっきコンビニのアルバイトとはいえ、とか殊勝な考えをして悦に浸ってたのにこれだからなぁ


「こちら1点で110円になります。」


「はい、これでお願いします」


ん、この腕時計さっきのトイレの人か


トイレ借りる時に一言言ってくれる人は個人的に好感度が高い

そういうしなくても済むことをする人は尊敬できる、と思っている。


「丁度お預かり致します。」


「、、もしかして今日初出勤ですか?」


見ない顔なので、つい気になって話しかけてしまった。

まぁ、今お客さん居ないし


「そうなんですよ、よく分かりましたね、もしかしてスーツ似合いませんか、、?」


うわ、ちょっと答えにくいな、正直言うとひょろっとしていてスーツに着られている感が拭えない。


でも流石に初日で挫くのも酷だろうし、、


「いえいえそんな、似合ってますよ社会人って感じ素敵です。

ただ普段見ない顔で若い方だったのでつい、自分も来年から就職なんですよ」


顔がパァーっと笑った


分かりやすい、、

いや、素直な方だなぁ


「ほんとですか、ありがとうございます。」


「それはそうとお時間大丈夫です?かなり長い間お手洗使ってましたけど」


「うわ、ほんとだ若干危ない、じゃあ今日はありがとうございます、また来ますね!」


「ありがとうございました、またお越しくださいませー」


元気な方だったな、気持ちが昂ってるのもあるだろうけど。


コンビニで働いてると店員を人と思ってないようなお客が腐るほど来るので


あの手のちゃんと挨拶、返事を返してくれるお客さんに会うとほっこりする。


いくら能力が合っても、トイレに行く時にちゃんと一言入れれる様な人の方が自分は尊敬できる。


一言で言えば、礼節と言うんだろうか。


「んっ、、、」


伸びをしつつ考える、礼節とは。


、、お客さん居ないしね。




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ショート集 ハルハル @haruharu_grm

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