影響を受けた小説たち

多賀 夢(元・みきてぃ)

影響を受けた小説たち

 ふと、自己紹介的に自分の読書遍歴など書こうと思い立った。 


 太宰治と夏目漱石には、当然として影響を受けている。

 夏目漱石は、日本の口語体文学の開拓者だ。誰が読んでもいつ読んでも、漢字以外に違和感を感じはしないだろう。

 全ての作品が漱石を通り、または漱石を吸収したものに影響を受けている。だから漱石は読みやすく、面白さがストレートに伝わってくる。


 太宰治は、実は策士だと思う。簡単な話を面白く、誰かの言葉をいじらしく、たくさんの仮面を使い分けるように書いている。代表作『人間失格』も同じだ。あれは太宰のようで、太宰じゃない。太宰の生いたちに似ているけれど、完全に同期しないのだ。あれは、練りに練られた創作、芸術だ。

 私は、太宰は自殺じゃないと思っている。『人間失格』のラストは、変則的な希望を描いている。希望を描ける人間は死なない。実際に、彼は次の作品を手掛けていた。あれは無理心中させられたのではないかなあと、私は睨んでいる。



 実は、私が本当にたくさん読んだのは海外の推理小説である。

 コナン・ドイル、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、エドガー・アラン・ポーなどなど。作者も主人公も忘れたものもたくさんある。

 盲目の探偵が、話を聞くだけで事件を解決するお話が好きだった。安楽椅子探偵ものは、好んで読むジャンルの一つだった。

 日本の推理小説も好きだけど、江戸川乱歩は子供向けでも充分グロい。耽美な世界に興味のない私は、あまり乱歩にはのめり込まなかった。



 私は古い作品により影響を受けてはいるが、中学~高校の頃にはライトノベルにもハマっている。

 一番読んだ作家は赤川次郎。またもや推理小説だ。

 特に『第九号棟の仲間たち』シリーズが好きだった。自分をホームズだとかダルタニアンだとか自称する人たちと、事件を解決していくお話。とても夢と愛のある作品だなと思う。

 次いで、氷室冴子。『ざ・ちぇんじ!』と『なんて素敵にジャパネスク』のおかげで、平安朝には異常なほど詳しくなった。当時は黒板いっぱいに大和絵を描いて、同じく氷室ワールドにハマった友人と平安ロマンに酔いしれた。



 だけど一番影響を受けたというか、考えさせられたのはBLじゃないかと思う。でも、普通のBLとはかなり違うけど。

 ホワイトノベルから出た、深沢梨絵の『本気でほしけりゃモノにしろ』。私としては、BLとは呼びたくないBL。なぜなら、絡みもないし恋の描写もほとんどないから。主人公に片想いしている男が、主人公と共にいろんな障害とぶつかりつつ、時には身を挺して助け、時には大人として諭して、主人公の成長を優しく見守るというお話。

 読者には「あー、愛ゆえの行動が切ないなー」と分からせつつ、主人公に届いていない事も見せつけるという『意図された』行き違い(4巻ぐらいでやっと気づく)。私が今書いている『恋と愛と性欲は別(腹)』も、この作品に影響されてるんじゃないかな、と思う。


 これ読んじゃうと「本当に純粋な恋愛とはなんぞや」って思うし、「ジェンダーとはなんぞや」「性はイコール恥なのか」って、妙に悩んでしまう。あと、芸術家って実は社会を変える凄い職業なのかなぁなんて、読了後にふっと名シーンを思い出して考察してしまう。

 文体はいかにもライトノベルだけど、当時の社会問題が、しかも今にも繋がる問題が、たくさん詰まっていたなあって思う。

『本気モノ』シリーズだけは再入手したいけど、なかなか難しいかな。


 最近は世界の軍備の解説本だとか、人間心理の分析だとか、そういうのばかりを読む傾向がある。そろそろ小説を読まなきゃなあと思いつつ、書く方が楽しすぎて、紙の本に手が伸びてない。

 そろそろ、インプットもしないとなあ。

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影響を受けた小説たち 多賀 夢(元・みきてぃ) @Nico_kusunoki

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