たとえ、それが剣でなくとも――

たとえば、それが剣でなく祈りだったとしても――

この物語には、静かにして圧倒的な“力”が宿っています。
白き修道服を纏う少女が、武を知らぬまま騎士団の頂へと歩み出す姿は、あまりに場違いで、けれど、だからこそ心を打つのだと思います。

王政と教会が複雑に絡む世界で、孤児だった少女が突然“組織の長”に選ばれる。その重責に戸惑いながらも、柔らかな微笑みと揺るがぬ信念で、彼女は騎士たちの心を静かに揺り動かしていく。その一途な強さは、まるで夜明け前の祈りのように、周囲に小さな変革の火種を灯し始めます。

それはまるで、静けさのなかで始まる夜想曲(ノクターン)のよう――そんな余韻が、今も心に響いています。


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