2 双子の姉

───翌日。


「ふむ。そのセレーネというお嬢さんは、なかなか面白いことをするね」


マートンは手を顎にあて、にっとエマに向かって笑った。


「わがままで自分勝手ですが素直で可愛い人なんですよ」

「物は言いようだな」


ジュードがボソッといった言葉に隣に座っているエマは、ジュードの足を踏んだ。


「いって!!……エマちゃんバカ力なんだから手加減してくださいよ」

「また呼び方……」

「っふ、今の俺は探偵なんで」


二人が冗談混じりの会話をしていると、急に部屋の温度が10℃ほど下がった。


「……何か寒くないか?」


ロンはぶるっと震えた。シーナは両腕で自分の腕を擦りだした。


「そうね……急に部屋の空気がかわったというか……」

「あ…………」


エマはドアを見ると皆もエマをみて、パッとドアを見た。にゃーっと、ウィルはエマの膝に飛び乗った。


「……女性がいるんですか?」


ジュードの言葉にエマが頷く。


(あの人が言っていたのは本当だったみたいね。私の姿が見えるエマという子はあなたね?)


青白い顔をしたの女がエマを見てにやっと笑った。


メアリーの時には何も感じていなかった人たちも今回は空気が違うことに、急に黙ってしまう。


「……ええ、私がエマです。話を伺いたいので、どうそこちらへ」


女はスッとエマの前の席に現れ座った。


「私たちは奥にいますね」


シーナのその声は震えている。

ソファーにはエマ、ウィル、ジュード、そしてマートンが座っている。


(私の名前はルネ、18歳。四番地に住んでいるアガー家の娘よ。)

「四番地に住んでいるルネ・アガーさん……」


エマが皆に聞こえるようにルネの名前を復唱し、それを聞いたマートンがポールに目で合図を送った。


「ルネ・アガー……」

「知り合い?」

「いや、違うよ」


シーナに聞かれたロンは首を横に振った。


「ルネさん、それで……殺されたとは……?」


エマは恐る恐る尋ねた。


(……私には双子の妹がいるんです。名前はモネ。私たちは4歳まで一緒に育ったわ。それまではとても仲の良い姉妹で近所でも評判だったの。小さいときの記憶だから私も曖昧なところはあるけれど……4歳の時に突然妹のモネがいなくなって……両親に聞いたらモネは病気になったからゆっくり静養するために田舎の親戚の家に預けたと言われたわ。元気になったら戻ってくるからと。小さかったから私も何の疑問も持たずにそのまま家族三人で暮らしたわ。モネの話をするといつも両親は難しい顔をするし、モネのことを聞いた日の夜は決まって、仲の良い親が喧嘩をするの。聞いちゃいけないんだなと悟ってモネの話をするのをやめたわ……そしたら13歳のある日、街を歩いていた時に「お姉ちゃん」てモネに声をかけられたの)

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転生令嬢の私に未練はお任せください @riku-123

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