ポケットに入れて

4 泣き叫んだって良いのに。

　シュークリームは、素晴らしい。

　カレーパンのように「一口かじってもカレーに辿りつかない」なんてことがほとんどない。

　生クリームとカスタードクリームが食べたいという欲求のままかじれば、だいたい一口でそれを叶えてくれる。

　そう、シュークリームは欲望に忠実だ。

　ケーキのようにどこかかしこまって食べなくて良い。

　大きく口を開いて、そのまま噛みつけば良い。

　最高だと思う。

　彼が残したやり場のない悲しみやそこから生まれる攻撃性を、柔らかい皮とクリームで受け止めてくれる。

　顎が外れそうなくらい大きな口で頬張ると、クリームが溢れた。

　それを見て思う、私は本当に彼のことが好きだったのだ。