宇宙タクシー

かもがわぶんこ

宇宙タクシー

「お客様どこまで?」


「あの銀河の果ての太陽系って呼ばれている所に行きたいのですが」


「ああ、あそこに行っても何もないですよ、危険な生物もいますし」


「会社の用事でちょっと……」




 私は銀河の中心に近い星から端っこのドドド田舎の辺境の地を目指していた。

いろんな星を巡ってはその星を3Dスキャンしデータ化する。君たちの言う所の不動産屋みたいなもんで、辺境の地に別荘を持ちたい人に星を紹介する仕事だ。




 途中までワープ高速を使うのだが、まだそこまでは伸びておらず、終点のワープインターで降りて下道を走る。君たちが呼んでいる太陽系までは2年もかかってしまった。ワープ高速も銀河新幹線も通っていないこんな星なんか売れないなぁと思いタクシーの窓の外をぼーっと見ていた。




 太陽まであと半年の所まで来たのだが、その前に門のようにたくさんの岩石群があった「アステロイドベルト」というものだ、タクシーは岩の間を蛇行しながら走る。君たちの言っている未舗装の酷道みたいなものだ。

おかげで車酔いをしてしまい酷い目にあったが、やっとのおもいで一つ目の目的地の到着するが…凍りついていて使い物になりそうに無かった。




 さらに中心部へと進む、「海王星」と呼ばれている星が見えてきた。気体でできている惑星なので家も建てられそうにないので、土地カタログに載せるのは諦める。

そう、惑星には気体で構成された星と、岩石で構成されている星があり、私は岩石でできている星を探している。なんせ土地屋ですからね。




 ガス惑星が続く、麦わら帽のように輪っかをつけた星もある、たしか…「土星」とかいうのかな? 土星を素通りして、その先には大きな目玉を持ったこれもまたガス惑星が見えてきた、「木星」というらしい。




 めぼしい物件もなく太陽の方まで進むと、やっとまともな岩石惑星が現れる。

ぼーっと赤く輝いている「火星」だ。

運転手に頼み星の周回を回ってもらいながら3Dデーターをスキャンするが、どこにでもあるような岩石惑星でまぁ価値は無いだろう。



 しばらく進むと青い綺麗な星が見えてきた、噂には聞いたことがある、そう地球というらしい。運転手にあの星に寄ってくださいと言うと………。



「あそこだけはやめときなさい。クズ星ですよ」



 運転手が眉間にしわを寄せて断ってくるので断念することに。見た目綺麗なのだが何か問題でもあるのだろうかと思い先に進めるも、「金星」「水星」というこれもまた使いのにならない星が続く。


 しいて言うなら、金星はわりと灼熱なのでサウナくらいならできるかもしれないが、まぁこんな星は銀河の中心部には星の数ほどある。ここに来る方コストの方が高くつき価値なんてないだろう。


 うまく例えられないのだが ……… 君たちの言うところのエベレストの頂上に温泉があり、水質はすこぶる悪く、大きさも洋服屋の試着室くらいの、ぬるいお湯に入りに行く、くらいのものだろうか。そんなところに行くには、よほどイカれた粋狂くらいなもんだ。



「お客さんどうでしたか?何か収穫ありましたか?」


「いやぁ、運転手さんのおっしゃった通りでした」


「そうですかぁ。まぁもっといい星があるかもしれないので頑張ってください」



 時間をかけ車酔いまでしてきたのに収穫もなく、さらにまた帰らなければならないと思うと、辺境の地の意味をかみしめていた。

そして、クズ星のまえを通りかかるとピカッと光りが見えた。



「運転手さんあの青い星の一部が光りましたよ」


「ああ、あれね。あそこに住む生物が自分の手で星を壊してるんですよ。核実験っていうやつで綺麗な海や大地を壊して喜んでいるんですよ」


「えっ!か、か、核って、あの核ですかぁ!」


「そうなんです、花火かなんかのつもりなんでしょうかね?」


「うっ宇宙条約無視じゃないですか!」


「ああ、まだあいつらはそこまで進化していませんので、この先滅びるでしょう」


「あんな綺麗な星なのにねぇ。腹たつなぁ、なんなら生物を掃除して開拓したいなぁ、あっでもそんなことしたら我が社が宇宙条約違反になりますね」


「実は数年前にも、どうしてもって頼み込まれてあの星に行ったんですよ、なにやら同じ生物同士で喧嘩してるみたいで、本当に血の気の多い種族です」


「意味わからないですね、なんで同じ種族で滅ぼしあってるんですかね?」


「そこまではわかりませんが、多分あと100年もいないでしょう。そのあとなら開拓できるかもしれませんね」


「100年かぁ、そうですね、じゃあ唾でもつけておきましょうか? 我が社の占有惑星として登録しておこうかな。」


「そうですね、でも、登録料の方が高いかもしれませんよ」


「あははは、そうですね」




 こうして私の太陽系のデータ収集の仕事は終了した、上司に報告書を出すとやっぱりなという顔でデータを受け取ってくれた。


「大変な仕事を頼んで申し訳なかったね、どうだったいい星あったかい?」


「あるにはあるのですが、同じ星同士の生物が殺し合いしてるみたいで、しかも核で汚染されているみたいです。水はたくさんあるのですが。。。」


「ああ、地球のことだね、あれはダメだ。あのまま鎖星(鎖国)して終わる星だよ。」


「私も、なんかそんな感じがします。」


「帰ってきて悪いが次はここの惑星系に行ってくれないかね、太陽系よりはマシだと思うよ、立派な温泉もあるしさ」



 その夜、銀河新幹線のガード下のおでん屋で、一杯引っ掛けながら、地球人に向けてメッセージを送る、地球に住む生物に届けばいいのになと思いながら。



『もし、もし僕の声がきこえるかい? どうして君たちは星の中で争うのかな?あげく地球まで壊ちゃって。言っておくけど君たちは宇宙条約を無視して核兵器なんか原始的な花火で遊んでいるから、宇連の危険生物に認定されてるよ。

だから他の星を開拓したら無免許開拓違反で人類が駆除されちゃうから、今住んでる星を大切にしなよ。そこにしか生きられないんだからね!』



僕は見てきて太陽系の印象と、警告文を送信すると、星乃寒梅という酒を煽りながら明日からの仕事の段取りを考えていた。



【宇連】宇宙惑星連合

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【同時刻、地球にて】



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 仲のいい人間の親子が深夜小高い丘に登り、真っ白な天体望遠鏡を天の川に向け空を見上げている。



「おとうちゃん、宇宙人っているのかな?」


「そうだなぁ、いるかもしれないなぁ、でもこんな綺麗な星に来ないんだからいないかも」


「そうだね」


「あははははは」



こうして人類の平和が守られていることを、地球人は知らない。


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