天秤

@megumiko

第1話 失礼な事情

清美は笑いながら慎二の絶頂を直視していた。

目を瞑っていきそうな慎二は、何を想像しているのだろう。

いや何も想像せずに、もうすぐ訪れる快感にむかって必死に動いているのだろう。

大きな熊さん。お疲れさま。

完全にバカにしたような気持ちで笑っていた。

ひどい女だ。

清美は、慎二の大きな身体を

全身に受け止めながら、頭の中でつぶやいた。

「わたしは、いつから交わりを客観視してしまう女になってしまったのだろう。」




「いった?」

清美は動きがとまった慎二に聞いた。

「うん。」

慎二はティッシュを清美の股に挟んでシャワーをあびにいった。


あぁ、どうして一緒にいけないんだろう。


中谷 清美。

33歳。

まだ人生で一度も中でいったことがない。


そして、付き合って5年も経つ、

慎二との行為が終わり、

うつ伏せになって、

自分の冷静さに嫌気がさしていた。


誰とだったらいくことができるのだろうか。

勝手に相性が悪いと決めつけ

きっと違う人だったらいくのかもしれないと、

登場人物を増やして解決しようとし始めた。


愛し合い方に基準はないのに、比較しはじめる清美。



そうだ、比較こそがいかない理由ではないだろうか。

清美は、どんなときも、答えがほしい

人間である。


1+1=2

と正解に教えてもらった

あの日から

清美は答えがあると安心する。


そして、誰も解けてない公式を

解いたかのように答えを導いた。



「私は勝手に慎二を天秤にかけていた。右は私の妄想。 左は慎二。

だからいつも慎二をバカにしてしまう行動にでてしまのだろう。極めて申し訳ない。」


清美が比較する私の妄想は欲の塊である。このみえないしみついた錆びをどうしたら磨けるのだろうか。


何か道具が必要か?


女の子向けのビデオ?

テンガのあのプニプニした玩具?


いや違う。

比較してしまう自己との折り合いのつけ方だ。

そのために必要になのは聞いてくれる人だ。


そして、清美はネットに書き込んだ。


「誰か助けてください。」

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