モラトリアム
絵空こそら
モラトリアム
月を自分の彩度に引き込むような、パステルな夕空が好きだ。この時間はすべてが曖昧で、ふわふわきれいで、清々しい。あと少ししたら、黒と銀のコントラストだけになってしまうのだけれど。
終わりに触れるのは嫌い。コーンスープの最後の粒は探さない。余韻が耳を打つ前にイヤホンを外すし、漫画の最終巻は読まない。エンドロールの前に映画館を出る。同じタイミングで席を立つ君だから、今こうして、隣を歩いてる気がする。
でも時々思うの。凍る満月みたいな言葉で、君を射止められたらどんなに素敵かって。言えたとしても、すぐその輪郭をぼかすようなことを、言ってしまうんだけれど。
君は、終わりを嫌がる君は、それでも私との散歩を、終わらせるだろうか。それとも新しい道を、歩こうと言うだろうか。終わりのない道を。
君の大事な心臓の音をきいたことがない。その中にどんな月が眠っているのか、私は知らない。いつか言えたら、きけたら。そのいつかさえも、曖昧なままで、夕空に月を沈める。手と手のあいだ15㎝だけ、今は大事に。
モラトリアム 絵空こそら @hiidurutokorono
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