6章 異常な襲撃者
ジメジメとした空気が肌に貼り付く水路脇の細い通路。
濡れた足場に気をつけながら暫く進んでゆくと…
「はっ!?」
不意の気配、殺気。
「ジャネットセンサーに異常ありです」
と、耳元で囁く。
勿論探偵は、突然の事に訳が分からず動揺を隠せない。
「敵です」
そんな姿を知ってか知らずか、努めて冷静に、自分の後ろへと促す。
「もっと分かりやすく〜」
とエリオノーラが愚痴る間もなく、男が脇道より姿を現した。
言われなくても目がいった。
男の握りしめる、禍々しい気配を放つその剣に。
「バツグンに分かりや…」
「それについてはまた後で」
真面目な声で助手を制する。
「アイツは…」
「全然わからん!」
「魔剣に操られてるみたいよ」
「魔剣に!?」
「がはっ!!」
悠長にお喋りをしてる暇は無いようだ。
魔剣を振りかぶり、男が二人に襲いかかる。
生気の無い血走った瞳が空虚に光を放つ。
だが切っ先は二人には届かない。
ジャネットが的確な動きで制している。
「前はお願い!!」
引足を一歩、エリオノーラの賦術【バークメイル】がジャネットを包み込んだ。
柔らかな力場が彼女を覆う。
「お任せください」
剣を握りしめジャネットは応える。
自身も賦術【クリティカルレイ】により、アビスの呪いを留めしスキアヴォーナは白く輝きを纏わせる。
刹那、
「必殺!!!」
大きく振りかぶった一撃は空を切る!
だが素早く放たれる二撃目!!
二度目の斬撃もわずかに服を掠めるだけに留まった。
「あら?」
「ジャネットがダメなら私が!!」
「ダメとか言わないでくださいっ!」
エリオノーラは魔法の行使に集中し、炎の矢<フレイムアロー>を撃ち放つ!
「くらえ!!」
それは的確に的を捉え、焼き尽くしてゆく。
灼熱に焼かれた男の半身は今にも崩れ落ちそうだ。
紅く怨念のこもった眼が、エリオノーラを睨みつける。
「…あ、異貌し忘れてた」
彼女にはそれもどこ吹く風。
見る間に姿を変貌させてゆく。
探偵は生まれながらにその身に穢れを抱きし存在、ナイトメアだった。
母の胎を裂き、忌み子として生まれた彼女の生きる術は「強くなること」だった。
男は邪魔をするなとでも言いたげに、恨めしそうにエリオノーラを睨みながら魔剣を振り下ろす。
それは体勢を崩していたジャネットの肩口へと深く、呑み込まれていった。
「うわぁあぁ!?」
「ジャネットっ!!」
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