2章 彼女の依頼

彼女、ルミナスの依頼としてはこうだ。

『二日前の深夜に殺され、翌朝惨殺死体として発見されたフィアンセ<カスパール>

その死因を調べ、犯人を見つけ出して欲しい。』

報酬は1万ガメル。

個人の依頼としては高額な部類だろう。

この依頼人ルミナスと二人には少なからずの縁がある。

以前、彼女の父親からの依頼で彼女の捜索を行ったことがあるのだ。

彼女の家出が原因だったのだが、その途、

危うく賊に誘拐されそうになっていた所を助けた経緯がある。

なお、家出の原因は件の彼…だ。


「被害者はざ・ん・さ・つされているんですよ?」

腰を屈めたままジャネットが続ける。

「惨い事件だからこそ私たちが解決するんですよ!」

エリオノーラの声が思いがけず大きくなった。

と、ようやくそのやり取りに気付いたのだろう。

「あの、小声で何を…」

ルミナスが上目遣いに二人に尋ねた。

「い…いえ、お気になさらずぅ」

「気にしないでください」

こほんと咳払いをひとつ入れ、エリオノーラ笑顔でがジャネットを肯定する。

「あ、ありがとうございます」

それを見たルミナスは、小さく首をかしげぎこちなく笑うのだった。

「それでですね…」

エリオノーラが続ける。

「依頼の件ですが、私たちでよければ是非お受けしたいと思っています」

そう言って振り返った先の顔はどこか思案顔だ。

「いいよね?ジャネット」

「は、はいぃ」

何を考えていたのだろう?

「い、1万ガメルですもんね!」

報酬のことだったのかと、額に手を当てる。

「こら!金額の問題じゃないの。私たちは、人助けのために探偵をしてるんですよ!」

エリオノーラの強い口調に、コホンと小さく咳払いをするジャネットであった。


「いえ、お金も大切です」

そんなやり取りに、依頼人ルミナスが割り込んでくる。

「遠慮なくお受け取りください!」

「あ、え、でも…」

口ごもるエリオノーラ。

「そうですね。これも人助けですから」

対象的な笑顔を見せるジャネット。

すうっと一歩前に出て、前金の入った革袋をルミナスから受け取る。

「お任せください、我々が必ず犯人を見つけ出して参りましょう」

ルーンフォーク会心の笑みだ。

「よろしくお願いします」

ルミナスは小さく頭を下げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る