踊り子からの返歌~我が一族に流れる血

多賀 夢(元・みきてぃ)

私ができるまで。

 なんか、ものすごく熱烈なファンレターを貰った。

 多分歳は私より少し下、学歴や偏差値という数値では、私よりはるか上をいく人のようだ。うちの上の弟と同じくらいの学歴・偏差値ではないかな。

 うちの親の言いなりになっていたら、私達3姉弟はこの人と同じ職業か、近い職業になっていたと思う。


 ただまあ、言いなりにさせようってのが無理なんだけどね。

 うちら姉弟は『踊り子』で『マッドサイエンティスト』だから。


 親の言葉を正しいと思いつつも、どこか納得していなかった。

 他人を楽しませて対価を貰うような事が、仕事じゃないの?

 何かを作り出して売る事が、仕事じゃないの?

 いい会社に入っただけでOKとか、医者になっただけでまるもうけとか、それは仕事の考え方じゃないんじゃない?


 姉弟3人ともが、その思いを共有してした。

 父方の血は自立心が強い。常識よりも己を重んじる。

 私はそれを『踊り子』もしくは『マッドサイエンティスト』と表現する。

 己を高める事で益を得る。私も弟も、従兄弟までも、それを求めた。


 しかし、私の父母が求めたのはステータスだ。それも、賢い子を産んだというステータス。祖父が欲しがった『医者の孫』を奉納するというステータス。

 祖父は、孫を医者にした家に家督を譲ると宣言した。父母はそれに目が眩んだのだ。


 だからうちら姉弟は、すったもんだで大喧嘩した挙げ句、最終的に結束したんである。我が一族の血故に。

 別に遺伝ではない。うちはかつて大名家で、謀反を起こした歴史がある。その大罪には一族ならではの意味があり、『たとえ孤軍となろうとも、己が信条を第一とする』という思想を植え付けているのだ。うちの父だけにはなかったけどな。


 とはいえ、自分の信条を取り戻したのは大人になってからだ。

 ネットの普及で私の考えが多くの人に見て貰えるようになり、やっと自分に自信が持てた。普通なら出会えない、Goog○eの凄い方からコメントも頂けたりした。

 それまでは、全てお世辞だと思っていた。誰も信じてなかった。

 だけどそんな方が食い下がってまで褒めてくれたから、私はやっと自分を肯定できた。

 そこからは、ずっと己との戦いだ。文章磨いて、他者の作品を分析して、新しい話題を探して、etc。more and more。仕事以外の時間は、全て小説のために。

私はやっと、『踊り子』である自分を解放できたのだ。


 弟2人も、一人は本当に研究者になり、もう一人は家電の設置・修理の仕事をやりながら、趣味で虫と電子工学の研究をしている。

 従兄弟は兄弟でダンサーになった。まんま『踊り子』である。


 母がうちの一族に入らず他所で私達を産んでいれば、私達は操り人形であったろう。しかし、我が一族の血は自分ファーストだ。破天荒で世間体も気にしない。悪役令嬢昭和版の母、その取り巻き1の父などに、世間がどうのと言われたところで「アホか!」の一言で終わりである。


苦悩も葛藤も、された虐待も、書けば本当にきりがない。

だからそれは、小説で小出しにしていきましょう。

私は『踊り子』。表現を魂の糧とする者。他の生き方なんていらないわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

踊り子からの返歌~我が一族に流れる血 多賀 夢(元・みきてぃ) @Nico_kusunoki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ