遅滞戦術

「それでだヘルムート。これはお前にしかできん事なんだがな。」

「戦術に関してですか。」

ビスマルクがモルトケに対して現状の説明と今後の相談を始める。

「実は今いる国だが、戦争状態につい一週間ほどまえから突入している。

戦線は洪水かなんかで膠着していたらしいが、そろそろ収まって戦闘がふたたび始まるだろう。」

「なるほど、現在の野砲の展開数はいくつくらいですか?」

「そうだ忘れてたな。見る限りこの世界の技術レベルは中世レベルだ。局舎射撃やまして支援砲撃なんていう概念はまだ存在していない。」

「そうでしたか。それは好都合ですね。こちら側が戦闘教義(軍隊の基本的な運用思想)においてかなりの優位性を取れます。」

「そうなんだが魔法なんかの概念が存在している世界だ。既存の戦闘教義が役に立つとは思えんが。」

「戦闘教義などは、もともとそんなモノです。柔軟にあらゆる面に対応できるから教義として成り立っているのですから。

では現在のこの国の軍事に関して教えていただけますか。」


「うむ。まずこの国はヴァルキュリアという人外種族の民族国家だ。そして騎兵が強い。正直、俺達の時代にでも太刀打ちできるだろう。

大型の魔獣を狩る文化からか、騎兵の集団陣形が完成している。」

「なるほど。ですが中世の密集陣形に対して騎兵はだいぶ不利です。」

「それなら問題ない。彼らは弓騎兵だ。それも2m超えのロングボウを馬上から正確に射る方法を見に付けている。例えるなら日本のカマクラブシとロシアのコサックを混ぜ合わせたような戦術をとっている。」


「では敵軍の戦力と戦略はどんなものなんですか。」

「敵の詳細についてはあまり分かっていない。分かっている事はこちらの六倍の戦力を持っている事だ。プラスで航空戦力も保有している。」

「さきほど技術は中世レベルだと言いませんでしたか?」

「そうなんだがな、どうやらドラゴンがいるらしい。騎乗可能な飛行生物だ。」

「気球何かとは比べ物になりませんね。」

「まあ爆撃はされないだけ安心だろう。まあ偵察部隊としては我々も未知の領域だ。用心せねばならんだろう。」


「あのすいません。その話私も混ざっていいですか?」

「ん。クスコか。お前はあまりそういう話は詳しくないと思ったが。」

「でも私オットーより未来の人間ですよ。」

「未来人ですか。クスコさん未来の航空戦力はどうなってるんですか。」

「ヘルムートさん。えっとですね未来では飛行機とヘリコプターが空を飛んでいます。」

「どっちも知らない名前だ。」

「そうですね。過去の人間には難しすぎます。」

(ちなみに飛行機も実用的な飛行船も1900年以降の代物)

「これは航空戦力担当で誰かを呼び出さなくてはな。」

「そうですね。クスコさんお願いできますか。」

「うぅ...私もヘルムートさんの召喚で魔力を使いきってしまったので回復まで待たないと行けないんですよ。」

「なるほどそうでしたか。」


「では今回は航空戦力に関しては無視で行きましょう。おそらく地上で戦う力は少ないです。もし戦闘能力があっても少数なら騎兵部隊が問題なく対応できるでしょう。」

「ではヘルムートどう戦うのだね。」

「今回は遅滞戦闘と同時に集散的後退を行います。その後騎兵部隊を用いて挟撃を行います。」

「なるほど。ヘルムート。お前が言うなら問題ないだろう。一様聞いておくが各個撃破の可能性は?」

「おそらく問題ありません。地形特性的に大規模な軍事行動は取りづらいです。もし敵が各個撃破を狙ってた場合は騎兵の突破力で敵部隊に浸透します。その後に包囲殲滅です。」

「なるほどお前らしい。そういう事だが、クスコお前はどう思う。」

「地上においては二人のほうが詳しいからね。問題ないと思うよ。敵のドラゴンに関しては色々考えてみる。」

「それがいいでしょう。クスコさんが今の所この世界で一番近代的な航空戦力を知っていますから。」

「よしそういう事だ。早速準備に取り掛かる。俺は各部族を取り込む。ヘルムートは軍事改革。クスコはそれを手助けしてやってくれ。」

「わかった。」

「わかりました。」

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