☆3900突破感謝記念SS ダークサイドオハナダンジョン 徘徊するP
一人のプレイヤーが岩陰に身を潜める。
此処はオハナダンジョン。
数多のプレイヤーが挑み続け、その侵入を悉く退けてきた『難攻不落』の牙城。
このプレイヤーも仲間と共にまだ見ぬ階層へと足を踏み入れ、そして先ほど手痛い歓迎を受けたばかりだった。
ダンジョン内を自由自在に闊歩するオハナの眷属たち、一人一殺とばかりに己の命を省みぬ特攻――――――純然たる殺意の奔流に仲間たちは皆死に絶えた。
仲間の死に背を向けて、悲鳴を上げつついち早く逃げ出していた彼女は荒い息を落ち着けようと深呼吸していると、
「逃げられるとでも思ってるのかしら?」
ダンジョン内に響き渡る声が聞こえた。
彼女が恐る恐る声がした方をそっと確認すると、そこに居たのは異形の魔物だった。
暗がりで全容は把握できなかったが、特徴的なのはその頭部が角の様になっている事だった。
「あんな魔物………見た事無い」
再び素早く岩陰に身を隠した。
それなりに長く活動してきたプレイヤーだと自負してきた彼女だったが、先ほど見た魔物は見たことがない。
未確認の魔物の可能性もあったが、オハナダンジョンにそのような魔物が出現するなんて聞いたことが無かった。
「………でも此処のダンジョンマスターなら未確認の魔物が出てきてもおかしくないか」
何せ此処のダンジョンマスターは『歩く貴婦人』ならぬ『歩く理不尽』オハナであるのだから。
その姿も未だ確認されていないが、噂によれば少女の姿をしているのだという。
そこで気付く、先ほどの声も少女の様だったと。
もしやアレはダンジョンマスターであるオハナではないだろうか?
それならば――――――と彼女は覚悟を決めて武器を握り締める。
未知の魔物が別の道へと進んで行くのを見送り、背後からゆっくりと忍び寄る。
そうしている間に姿もだんだんと把握できてきて、頭部こそ異様ではあるが大体の姿形は少女のそれであると確認できた。
「オハナ!覚悟――――――!!」
「よりによって今の私とお母さまを見間違えるだなんて、お母さまに対して無礼にも程があるわ!!」
瞬殺であった。
そして彼女は消えるまでの間に自分を殺した相手の全容を知る。
怒りの表情でこちらを睨みつけるのは、鮮やかなピンクの髪を逆立てた少女………オハナ眷属の一人である3号だった。
時は少し前に遡る。
奴隷解放クエスト中、眷属たちを煽動した罰として3号は『昇天ペガサス盛りの刑』に処されていたのだった。
当初オハナの『MAXパワーデコピン』によって断罪された3号だったが、それだけでは反省が足りないとサンガに進言され、何故かウキウキのワヲさんに捕まって今の刑に処されたのだった。
「あの球体いつか絶対に破壊してやるわ」
サンガからすれば日頃の鬱憤を少々晴らしたに過ぎないのだが、3号はそんなもの知った事ではなく、着々と憎しみが憎しみを呼んでいた。
それ故今の3号は不機嫌である。
相当に不機嫌だったのである。
「まぁ今日一日だけだから」
そう言って慰めてくれた母たるオハナの言葉でも相殺できないくらいには不機嫌であった。そんな時に運悪く見つかってしまったのが彼女の居たパーティーだったというわけだ。
そしてこの日以降、オハナダンジョンにて髪を逆立てた美少女の魔物が出ると話題になることになる。
--------
サブタイトルの『P』は3号の髪色であるピンクのP。
そしてペガサスのP。(詳しい綴りは知らないけどきっとPから始まると信じてる)
魔物だもの 感謝記念SS 暑がりのナマケモノ @rigatua
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔物だもの 感謝記念SSの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます