淡い郷愁が印象的な語り口のエッセイ。地下的なものが、どんどんと綺麗になっていく昨今。治安は良くなって、住みやすくもなったんだろうけれど、失われてしまうものもあるよね……、と読み終わったらちょっと切なくなってしまいました。
主人公の目線で語られる西城には、変に飾った言葉やオーバーな表現はない。いつの間にか、自分の心は西城に立っている錯覚に見舞われた。無論、悪い意味ではないよ。途中自分たちはここにいては人間なんだとあるが、恐らくは自分もそういう人種であろう。間違いなくね。それでも、西城に行ってみたいなと思わせる雰囲気がとてもいいんだよね。その気持が、この作品に高評価をつけた理由かな。
まるで異世界の裏路地に迷いこんだ様な小説でした。