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第1話 食す

 手はか細く、爪はひび割れ、肌はカサカサ、指は骨ばり、栄養が足りていないのが一目でわかる。着ているボロは死神のようで、足には乾いた土がこびりついている。年齢はどれくらいなのだろう。肌の見た目からしておばあさんなのかもしれない。むしろの上で横たわり、息も絶え絶えだった。でもまだまだ動ける活力はある気がして、体を起こしてみる。手をついて体を起こす、何とか力は入る。体を起こして一息。何でここにいたのか記憶もない。心はまっさらの状態。何も期待していないような状態である。体はあまり動かないみたいだが、心は今のところ無敵のようだ。心の存在さえ忘れていたくらいに。

 お腹がすくという感覚はわかる。それを解消する方法もわかる。なので寝ていたむしろをちぎり口に運ぶ、嚙み切れないし飲み込めない。物の名前はなんとなく憶えているようだ。土に木に空、手に足に口に髪。髪を触る。ごわごわの枯れた植物のようだ。土を口に運ぶ。むしろより悪くはないが、お腹を満たすものではないのはわかる。近くに生えた木のそばまで四つん這いで移動する。膝が痛い。木の傍らに横たわり、木の皮を剥いて口に運ぶ、カサカサの木の皮も土と同様である。剥いた後に見せた白い木肌を指でこそぎ集める。少し水分を含んでおり、悪くはない。飲み込めないまましばらく噛んでいた。少し力が戻った気がする。

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