第4話 ボクメツサレドモウラミハキエズ
森を駆ける。殴打一撃で飛ばされる距離にしては遠過ぎる。それに加え宛ての無いのが偉く難儀だが、森の中を出る事は無い筈だ。
「弾を詰めるには早過ぎたか..多少の考慮の時間があれば頭を捻ったがな、無理な話だ。」
足止めしている化け熊も直ぐに追い付く、間に合わせの拘束ではそう保たないだろう。
「唯一の仕留め弾だ、替えが効かん。大筒を使ってもいいが、身体の負担がでか過ぎる」
突発的に使用するには準備中不足だ。かといって短筒で数を撃っては日が暮れる。
「…仕方ない、奴等に任せるか。」
侍が指笛を鳴らす。
召喚の合図だ、山の守主の力を借りる。
「……来たか。」
上部から無数の駆ける足音、山を降る滑走と共に雄叫びを上げ一斉に集う。
「山狗よ、我が戦具を取り戻してくれ。」
長筒を巻き支えていた腰布の匂いを嗅がせ、森の中を
「持つべき物は味方だな..」
無理なものは他で補う。頼るのは何も人でなくとも優れていれば何でも構わない。
「よし佐助、お前は別の役割だ。」
「ワンッ!」
人一倍大きく屈強な佐助は余り捜索に向いていない。代わりに大きな役割を担う要となる
「すまんなお前等、罪無き野性に酷な思いをさせてしまう事を詫びさせてくれ。」
➖➖➖➖➖➖
〝命からがら〟という言葉があるが、確実に安全な空間で生まれる言葉では無いだろう。危機に瀕しているとき、何かを揺さぶられ、大きく脅かされている時に使われる言葉だ。
「とりあえず香苗さんを救い出す..!」
無事かどうかさえ把握をしていない、どこにいるかもわからない思い人を思い付きと憶測で救出する事を決意したが、道中には先程の狂人達が彷徨い歩き長らく常人を見ていない。
「挟門大学...なんとか着いた。」
名前だけ知っていた香苗の通う大学名。検索し、地図通りにすすんで辿り着いた。ここに香苗がいればいいが平日の朝だ、確証は無くとも可能性は高い。
「とりあえず中へ..待てよ、正面はマズいか?」
キャンパス内に狂人がいれば直ぐに襲われる
かといって他の入口を知らない。
「..何に反応するかわからないけど、もし音に反応してるなら。...やってみるか」
足下に転がる石を握りしめ、音を立てないように正門を開ける。
「うわぁ..やっぱいるな結構。」
おそらくかつては常人であっただろう人々がゆらゆらと身体を揺らしそこここに彷徨っては不気味な唸り声を鳴らしている。
「流石にこんな状態で外に居る訳もないだろうから、建物の中だよな。」
正面を突っ切れば中に入れるが、道中に多くの人々が点在しており危険が伴う。
「皆こっちを見ないな..そういえばバイト先でも襲ってきたのはこっちから話しかけた後からだった、自分では動かないのか。」
行動はモーションを受けてから、章吾が掛けたモーションは会話、つまり音だ。
「なら正面から遠い箇所に石を投げれば..」
建物から大きく逸れた方向に音が鳴るよう床に打ちつけるように握っていた石を放る。
「よし、引いた!」
狂人達は一斉に音のする方へ駆けていき、正面の入り口はガラ空きとなった。
「待ってて香苗さん。
..ていうかこの建物なんだろ、大学行った事ないから勝手がわかんないけど。」
入った建物が教室なのかはたまた他の施設なのか、把握を一切していない。扉を開け、中に入ると、大きなテーブルが並ぶ広間と奥に区切られた空間がある。区切られた小さな空間には冷蔵庫があり、奥にコンロも見える。
「…また厨房かよ。」
誰も読まないからおーわり!
呪い文ノミライ アリエッティ @56513
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