後日譚
私はかほと榊原さんと一緒に、依頼解決の報告を教務課に済ませに行った。
「なんで私も行かなきゃいけないんですか」
かほは不満を漏らしている。彼女は榊原さんに話があると言われて着いてきた。しかし報告を終えるまで何も言わないので、とうとうしびれを切らしたようだ。
かくいう私も気になる。話というのはかほだけじゃなくて、私にもあるらしい。
「じゃあそろそろ話そっか」
校舎脇のベンチへ誘導された。私達が腰掛けると、榊原さんはおもむろに話を切り出した。
「実はね、卒業後に一年間魔術師協会の支部で研修を受けてから、新しく国内にできる支部の部長を任されることになったの。なんかすごい買いかぶりされて、いきなりハードになりそうなんだよ」
「でもすごいですね」
「まあね」
彼女は照れくさそうにしている。
「それで新支部で働く人が欲しいの。二人が卒業したら、私のとこで働かない?」
「嫌です」
間髪を入れずにかほが言った。
「私の家柄なら、もっといいとこで働けるので」
「だめ」
かほと離れるのは嫌だ。その気持ちが先走って、思わず口に出てしまった。
「なんでよ」
「いないと張り合いがない」
「それは確かに。いや、でもそれは理由にならないでしょ」
「かほさん」
榊原さんがかほの肩を叩いた。
「いきなり本部に就職するより、下積みをした方が身になると思うよ」
「それもそうですね。先輩はしっかりしてそうですし、考えてみます」
「検討するだけか」
ちょっとしょんぼりしてしまう。
「すぐには結論出せないよ。えりかこそどうするの?」
「誘いを受けるよ」
私には帰る場所はない。ただ前を行くだけなのだから。
「そうなんだ。ともかくまだ二年あるんだし、学校のことを考えようよ」
「うん」
魔術師の使命はまだ理解していない。けれど、人として大事なことの一つは分かった気がする。アカシックレコードに到達しようとする意義だって見いだせる。そんな予感がした。
了
魔法少女はアカシアの夢を見る 鳴河 千尋 @miu1889
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