ケアレポ3 看護師悲喜こもごも【前】
バトンタッチして、引き継ぎました。
勤続6年目の中堅介護士です。
結婚後、初任者研修で資格をもらって、ずっとここに勤めています。なので、年齢はちょっといってます。
さて、利用者さんに好かれるスタッフの話。続き。
定期的にショートステイに入る80歳代前半Tさん(女性)は、認知症の影響もあって、入浴拒否がスゴくて。絶対入りたくないって、職員の手に本気で爪を立てて、嫌がります。
私も痕がつくほど爪立てられて。
でも、おうちからは絶対入浴させてくれ、って。自力では立ち上がることができないので、訪問入浴やデイサービスで入浴依頼していたんだけど、そこでも拒否がスゴくて大変だったそうで。
で、この話は実はヘルパーじゃないんだけど。
高齢者施設には看護師さんもいて、うちの施設では入浴介助にも入ってくれます。体の異常を見つけたり、処置をしてくれるんですが。
「Tさん、お風呂、嫌なんですか?」
この日、浴室に介助に入っていたのは、看護師のNさん。
最後まで拒否をしていたTさんは、入浴が最後になってしまいました。
「嫌なのよ。女がこんなところで肌を見せるなんて」
「そうなんですね。Tさんは大和撫子なんですね」
「そうよ。今の人は恥じらいがないったら」
「そうですね。そうだ、ここのお風呂、温泉なんですよ。散歩がてら見に行きませんか?」
そう言って、Nさん、服を着たまま、Tさんをもう誰もいない浴室に車椅子ごと連れていき、浴室を一回り。
「大きな浴槽でしたね」
「そうね」
「あのお湯、美人の湯なんですよ」
「そうなの?」
「あ、汗かいちゃいましたね。Tさん、お湯でも浴びに行きませんか?」
「いいわね」
なんと、Tさん、嫌がらず服を脱いでくれて。
「肌を見せないようにタオルかけますね」
服を脱ぐと同時にバスタオルで体を覆います。
それから、バスタオルにくるまれたTさんを入浴用の車椅子に移乗して。
あとは、とってもスムーズ。全身を洗い、浴槽に浸かりました。体を洗ったあとは、バスタオルを外しても大丈夫でした。上がってからの更衣もニコニコ。
「キレイになりましたね。Tさん」
Nさんがドライヤーで髪の毛を乾かしている間、Tさんは若い頃の話を沢山のしていました。
その後、しばらくは当番でなくてもTさんの入浴時にはNさんに来てもらって。
半年後くらいには、他の職員でもTさん、嫌がらず入浴してくれるようになりました。
マジ、Nさんに感謝!
「だって、女だもの。いつまでもね」
どうやら肌を晒したくない、というTさんの気持ちを尊重しつつ、お風呂への興味と欲求を高めつつ、なおかつ実際肌を晒さず入浴してもらうことで、安心してもらってみたいです。
Nさんが人事異動で違う施設に移ってしまった時は、職員、嘆きました。
だって、利用者さんだけでなく、スタッフに対しても優しくて、厳しく叱る時もあるけど必ず理由を説明してくれて。夜の呼び出しにも嫌な顔せず来てくれて(うちの施設では夜間は看護師不在で、交代で電話呼び出し当番があるんです)。
こんな風に嘆くのは、Nさんがいい看護師さんだったら寂しくて、ということだけではなく。
まあ、正反対の人もいるわけで。
続きます!
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