【1ニチ1カク】我が家の不思議な猫

めでとゆんで

我が家の不思議な猫

姉と散歩中、公園で虐待された猫をみつけて動物病院連れて行った。

ガリガリに痩せていて、片目は瞬間接着剤で固められていたため失明。

尻尾も根っこから切られていて、右前足は骨が砕けてブランブランになっていたため切除することになった。

お腹や背中には燃やされた後があったり、肉球も切り取られたがあったり・・・とにかく酷かったが、一命は取り留めた。

その後、我が家で飼うことになったんだけど、虐待を受けたせいか、家族とは常に一定以上の距離をとって生活していた。

数年かけて徐々に慣れてきたけど、絶対抱っこはさせてくれなかった。

それでも、時々頭をこすりつけてきて、眉間の辺りを撫でると目を細めて嬉しそうで、私もそういう彼女をとても愛しく思った。

ちなみに、父のお土産のペルシャ絨毯の上でよく寝ているので、ペルと名づけられた。


ある日、祖母が遊びに来たとき、ペルが祖母の膝に登ってまるくなった。

一同「うぉおお!!」と叫び、祖母も「私にだけ甘えてくれるなんて嬉しい」と喜び、みんなで遠巻きに記念に写真を撮ったりした。

それをきっかけに家族にも甘えてくれるようになった・・・ということは無く、その後もペルはペルのままだった。

それからしばらくして、親戚から祖母がすい臓癌で余命宣告を受けた、と連絡があった。

そして、それから祖母は1ヶ月もしないうちに死んでしまった。


その2年後のある日、叔母夫婦がうちに遊びにきた。

旦那さんはお酒好きで、ほとんど料理も食べずにお酒ばっかり飲んで困っている、と叔母が愚痴ってた。

するとペルがやってきて、旦那さんの膝の上に乗った。

これまた珍しいと、また写真を撮ったり「前に甘えたのは祖母だけだった」という話で盛り上がったりした。

それから半年もしないうちに、旦那さんの食道癌がわかったし、見付かったときには手遅れだった。


偶然?もしかして死ぬ人にだけ甘えるのか?と家族で話をしたけど、当然結論は出なかった。

その翌年、突然ペルが母の膝にのった。

母は真っ青になって翌日病院に駆け込んで、かかりつけの医者に「先生、私病気ですか!」と聞いたらしい。

先生は笑ってたけど、事情を聞いて不安を解消するためにと健康診断をすすめてくれた。

これまでのことも考慮して、検査できる限りすべての癌の検診を受けたところ、初期の甲状腺がんがみつかった。

本当に初期だったことと、母は喘息もちで冬場は発作のリスクが高いことから、3ヶ月ほどあとに手術をすることになり、そしてその手術も無事終わった。

その後、特に問題なく今も普通に生きているし、それからペルが母の膝に乗ることはなかった。


それからもう、ペルが誰かの膝の上で甘えることはないまま、21歳まで生きたけど、あれが何だったのかは未だに謎。

母は死んでないし、その合間に兄が事故で亡くなったんだけどペルは甘えなかったので、多分死ぬのを予知したわけじゃないだろうとは思う。

だとしたら、もしかしたら癌がわかったのか?もしくは、癌になったことで何らかの変化(臭いとか雰囲気とか?)が変わりそれを察知したのか?

真相はまったく不明だからオチは無いんだけど、とにかく、うちにちょっと不思議だけどめちゃくちゃ可愛い子がいたよ、って話でした。

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