第4話
病が一気に悪い方向へと加速したゆきは苦しそうに呼吸を繰り返しているが満足に息を吸えていないように思えてしまう。
「ま……しろ……」
「ゆき……どうしたの」
「ましろ……はしに……がみなん……だよね?」
「……うん」
「ならさ……わたしを……ましろ……の手で……殺して……くれない」
ゆきは生きることすら苦しいぐらいに病が悪化したのだろう。だから早く楽になりたい……殺されるなら私の手でやって欲しいと思っているのだろう。ゆきの気持ちは分かる……痛いほどに良く分かってしまう。
だけど私が死神である以上出来なかったから、初めて目から涙を流しながら出来ない理由を説明した。
「ごめん、死神は人の命を奪えないの。だから、私にゆきを殺せないの」
「そっ……かぁ……」
苦しいのにも関わずゆきは困ったように笑った。
死神が鎌を持てない根本的な理由は魂を刈り取ることを禁じる意味がある。死神は魂の運び人であって命を作り出した神で無い以上、命を奪うことを禁じられている。だから私にはどんなにゆきが死にたがっていても楽にしてあげることが出来ない。
「じゃぁ……ずっと……わたし……のそば……に……」
「いるよ。死ぬまでずっと私はゆきの側を離れないよ」
「あり……が……と……ぅ……かな……ぅ……なら……しん……でも……ましろ……と……ぃ………………」
そこを最後にずっとヒューヒューといった呼吸音がゆきから聞こえなくなった。
「ゆき…………?」
私が声をかけても雪は返事をしてくれない。本能でゆきは死んでしまったということが分かってしまう。
私は涙が止まらなかった。ゆきを失って初めて自分の抱いた感情が何だったのかを察してしまった。
「ゆき……好きだったよ」
自分の気持ちを魂では聞こえていると良いなと思いながらもう冷たくなったゆきの唇にそっと自分の唇を重ねる。それからゆきの首にかけられた銀のアクセサリーを外して自分の首にかける。
「これで……ずっと……一緒だよね」
ゆきの綺麗な銀髪をそっと撫でてから彼女の魂を回収して私はその場を去った。
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