死神の少女は恋をした
黒夜
第1話
死神には当然のように聞こえるかもしれないが規則と特徴がある。
一つは死神は鎌を持ってはいけないという規則がある。死神と言っても所詮私たちは神では無い……私たち死神は死者の魂を現世から死人の世界に運ぶ運び人だからと私はお母様に教えられた。
そして、私たちは基本的に人間に姿を見られることはない。何故なら私たち死神はどちらかというと死者に近い存在である。だからこそ生者である人間に私たちの姿が見られることはない。
だがこの特徴には一つだけ抜け穴がある。たった一つの前提で私たちは人間に姿を見られてしまう。
しかしこれは私にとって嬉しくとも何ともなかった。
***
私は気紛れで天から降りたって地上に来た。自分から来たかのように言っても、いつも通りのただの巡回だ。
地上に死者の魂が残ってもその人が苦しみ続けるだけである。死者は死神に魂を回収されることによって安らぎを得る。だから私は定期的に指示を受けていないにも関わらずに降りたって見回りをする。
今日も何処にもないと安心していたが、何処かの建物を出た女性がちらりとだが確かに私の姿を見てしまう。見られてしまったからこそ私はその女性の後をついて行くことにした。
横断歩道を女性が歩いていると居眠り運転か何かで注意が散漫な運転手が運転する車に女性が轢かれてしまう。周囲の人は騒ぐが結果など見るまでもない。即死だろう。
死神を見てしまうということは生きれる時間が残り僅かだということだ。つまり、死者に近い生者のみが死神の姿を目視出来る。
私は死んだ女性に誰にも見られないであろう存在である死神であることをいいことに接近する。そしてその女性の命が尽きた身体に滞在している魂を手で掬い取って死神に与えられた籠の中に入れる。
魂を回収した私はすぐにその場を離れた……誰にも見られないようにと願いながら。
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