芸者の明子を、洋服姿の青年が呼び止めた。
彼は、「智昭・クィルターをご存知ですか?」と明子に尋ねる。
華やかな夜の街の、暗い暗い闇の部分。
闇が深いからこそ灯りは美しく、サクソフォンの音色は哀愁を持って海風に運ばれる。
そしてその男の瞳は、朝焼けの色をしていた。
智昭と名乗った男と、交流を重ねる明子。
その交流の内容は、二人が身を置く世界としては、あまりに純粋だった。
夜は心地よい夢を見る。
そして必ず覚めていく。
そう言えば「明」という字は、月の光を表すのだな、と今更ながら気づきました。
月を置いて、朝はどこへ行ったのでしょう。