目の前の世界を映さず、昔はよかったと、それだけ繰り返す明子。現実世界で疎まれるだろうその言動に、行き場のない憤りと憐憫を感じる。でも彼女が目の前にいた時、私は口にはしないだろう。同時に、繰り返したいほどの大切な想い出を持っていることに、羨ましくも思う。私が家族だったら、どう想えばいいのか、どう接すればいいのか。今レビューを書いていて、結論を出したくない、と逃げている。この世界で、選択を迫られている人々がいるとわかっていながら。
同じプロットからお話を書く企画作品ですが、これはそのことを忘れてしまうほどの作品。介護に携わる方、ご苦労されているご家族のいる方、ぜひ読んでください。さまざま複雑な思いが交錯するリアルな現場を、どこか苦いのにさわやかに描き出していらっしゃいます。
オレンジカフェ。全国でかなりの設置数にも関わらず、一般的には知られていないカフェ。もちろん現実にあります。知らない、方はぜひ本作を御覧ください。美しくも切なくある親子の関係が温かいヒューマンドラマです。同業者として推薦します。