第9話 彼と僕
彼の名前は如月呼人と言った。
最初はその雰囲気や出会った時の印象から夜の人と書くのかと思ったが、そうではなく人を呼ぶと書いて呼人という字だ。
その後どうなったかと言うと彼はおとなしく警察に本当の事を伝えてお店に謝った。
本当に普通でテンプレートだったので驚いていたが驚いたのは僕だけだった。
何故なら本当の彼の異常さを知ってるのは僕だけだったからだ。
「どうした?また余計な事を考えてるのか?」
「なんだよ余計な事って!いつも必要な事しか考えてないよ」
僕は出来るだけふくれっ面に見える様に表情筋を動かした。
どうも彼の話によるとふくれっ面には見えないらしいが、、、。
「なるほど、ではその……ふくれっ面らしき顔で何を考えてるのか言ってみても良いよ」
出会った時からそうだが上から目線の話し方は彼の癖みたいなものらしい。
だから友達も出来ないのだ。
もっとも彼は「友達が必要と感じた事は一度もない」らしいが。
「あのとき、なんで君があんな事をしたのかという疑問が解けないんだけど」
「おやおや、アレから一年も経っているのにか?」
「そんなに経つのか?」
「そんなに経つね」
「でも、やはりわからない。君はなんていうか……おかしな拳法を習ってるよね?いや、隠さなくてよいから」
「隠す気はないが、おかしな拳法ではないし、習った訳ではないよ」
「なんだよそれ」
「親父の受け売りというか見様見真似ってやつさ」
「はぁ、そぅ」
「それで?」
「それでだ。あのときにそれを使えばあんな騒ぎしなくても良かったのにと思ってね、普段の君は喧騒を嫌う様な性格だろ?」
「僕の性格がわかるんだ」
「いや……わからないけど、あくまで表面上の性格なのかも知れないが」
「いや、冗談だよ。君の言うとおり僕は温厚な人柄だ」
「……それなら良いんだけどね」
「なにかおかしい?」
「だとしたら余計にあの時の行動は解せないね」
「まぁね。でも何となく君が人見知りだなぁと思ってね」
「まぁ……確かに」
「それでなんとなく俺に話しかけたい気がしたんでね」
「はぁ」
「コンビニのドアでもやぶれば話のキッカケくらいにはなるだろ?」
「はぁあ?」
「なにか問題でも?」
「そんな事の為に?」
「まぁね。幸い俺の親もコンビニの店長も寛大な方々だったので大騒ぎにならずに済んだしね」
「いや、なったよ!大騒ぎに!」
「そうかなぁ」
「やっぱりあんたサイコパスだよ!」
「かもしれないね……いや、理由は他にもあったかな」
「どんな理由さ」
「……壊れそうに見えたから……かな?」
「なにが?」
「君がさ」
「僕が?……まさか」
「じゃあ、見当違いだったのかもなぁ」
「見当違いだよ……いや、もしそれが当たってたとしてもコンビニのドアを壊して良い説明にはならない」
「そうか?」
「何故なるんだよ」
「君の心の代わりに壊れて貰ったんだ」
「……なんだよ……それ」
とんでもない奴だが、たまに訳の分からない事を言いながら少し笑うところが面白いので友達は止めないで置いてあげよう。
僕は公園のベンチに座る彼を他所にブランコに立ち乗りした。
「パンツが見えるぞ」
僕はギクリとして直ぐにブランコから降りたがそれを見て彼が笑っているのを見るとやはりまた騙されたようだ。
「この、変人サイコパスめ」
そう言って睨んだがやはり彼は意に介せずといった風に見つめ返してくる。
僕のスカートは膝まであるのでそうそう見えたりはしないのだ。
風の噂で僕らが1年前に知り合った不良グループは解散したらしい。
何でもリーダーは海外に留学したと言うから見かけにはよらない。
いや、見かけに囚われていたのは彼ら自身かもしれないが……。
不良 ハイブリッジ万生 @daiki763
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