甘く、たまにピリッとシリアスな姉妹ハーレム

1章読みおわって、たくさんの人に読んで欲しいと思ったのでレビュー書いてみます。
まず、背景描写についてですが、よく作り込まれていて読みやすいと感じました。恐らく作者のゆかりの土地を舞台にしているので(カクヨムの為にわざわざ取材に行くとも思えないので)、描写に違和感がありません。変に架空の街を舞台にして作者の世間知らずが露呈するような作品もあるので、そういう意味でこの作品の舞台設定は優れていると思います。
次に人物描写についてですが、ヒロインが非常に魅力的に描かれています。二卵性の双子の姉妹が二対の四姉妹という設定に歳が近く性格や個性に違いがある四姉妹であることが説明されています。1章では甘めな恋愛要素と適度なシリアスがバランスよく組み込まれていて、楽しく読み進められました。
さて、この物語において1番の賛否両論の要素は音楽描写です。この物語では音楽に関する説明、演奏描写が多数存在するのですが、その音楽描写が少々くどいと感じます。例えば、楽曲の、作品に直接関係の無い背景についての説明でかなりテンポが悪くなっています。これは作者がピアノ経験者であるが故に、作者の書きたいことと読者の読みたいものとの擦り合わせが上手くいっていないために発生しているのだと思います。なので、もしかするとクラシックピアノ経験者やクラシックに明るい人なら楽しく読み進められるのかもしれません。しかし、ピアノでは無いものの音楽経験があり、クラシックも人並みに聴く私でも、作中の音楽描写をくどいと感じたので、クラシックピアノの経験がないのなら、かなり造詣が深い方でないと楽しく読むのは難しいのかもしれません。かと言って、音楽という要素はこの物語においてかなり重要な構成要素なので音楽描写自体を否定することは出来ません。結局、商業誌では無いので作者の書きたいことに読者が折り合っていくしかないのかなと思います。
作者の文章力については大半の人は特に文句なく読めるかなと思います。殆どの文章は平易な表現で構成されていますが、それがかえって中学生の心理描写にマッチしていると感じましたし、知的さを感じさせる文章なので読んでいてあまり引っかかる部分はありませんでした。
全体的にはかなり出来のいい作品だと思います。作者の経験が作品に生かされているので描写が具体的で違和感なく読み進められます。人によっては、フィクションに作者の人生が透けて不快と思うかもしれませんが、ぶっ飛んだ違和感ありありの設定よりずっといいと思います。音楽描写についてはもう少し工夫が欲しいと個人的には思いますが、ちゃんと読めば知識も身につくし、作者が書きたいならそれでいいかなと思います。星の数もこれの3倍はあってもいいんじゃないかと思うくらい面白いです。