落ちる時には、未来なんて関係ない。だけど、賞味期限は3年。「愛と情」になりえない ”恋" のたどる道筋が、短い中に見事なリアリティを持って描き出されています。読む側も同じように、こんな恋があったなぁと想いを馳せてしまうこと必至。その過去の恋が思い出の中で輝いていると思えるのなら、きっとあなたは幸せな今を生きているのでは?
20年前、20代の頃を思い出す。そこには智昭がいた。父と娘ほども歳の離れたふたり。でも智昭は子供みたいな人物。ギターを弾いて楽しく暮らしていた。時がくればわかります。いつまでも一緒にはいられないと。キャッチ・アンド・リリースですな、こういう男性は。また誰かに釣りの楽しさを味わわせてやるんだぞ。小説に釣りは出てきません。
同じあらすじから別々の作者さんが物語を書く企画「筆致は物語を超えるか」に参加されている作品です。 魅力的な作品が多い中、本作は「あらすじ」に対してストレートな物語。特に「過去」が美しく甘美に描かれており、雨に打たれている「今の主人公」との対比がなかなかに面白い。 しかしこの物語は、美しい過去に縛られているだけの物語ではありません。 今の主人公は、過去を思い返して何を思うのか? ぜひご自身の目で、体験してみてください。素晴らしい物語、オススメです!
『Cafe コモド』では、遊び心ある店主が、お客やその場のイメージで様々なジャンルの音楽を流す。その日は、明子がよく知る歌が流れた。鮮やかに過去を思い出させる曲。今もこうして、思い出すほどの特別な恋。けれど、それは……。明子の、『現在』の言葉がとても好きです。星の光は何時だって、こちらに届く時にはもう過去なのだから。
カフェで音楽を聴くうち主人公は昔の恋人のことを思い出します。カッコイイ大人同士の恋愛関係が描かれるのですが、主人公の語りが機知に富んでいて色々考えさせられました。特に主人公の恋人への気持ちが一気に変化するシーンが良かったです。真逆の感情になっていくのに、その変化に妙に納得してしまいました。この物語の主人公のように、カフェで良い音楽とコーヒーを楽しみながら読みたい作品です☆