第5話 身投げの森
「……で、北の森へ
ラティナ達はアリアに従って用が済んだ
「それはアリアちゃんが結婚指輪を見つける
「はい、その通りです。少しお待ちを……」
アリアの眼が琥珀色から青から緑のオーロラ色に変わった。彼女は電磁波が見える、
アリアの視点から二つの小さいものとそれらを持つ人型の揺らぎ、かつてその場に留まっていたものから発していた電磁波の
アリアは長い袖に隠された右手から顕現したままの糸玉と
「《
高速で一層ずつ“線”を生み出しては
「んお!!」
「ふわわっ、これは!!」
線が積み
そう出来上がった形は先程、浄化した
「これは私の《スレッドオブトレイサー》でこの場所に残っていたあのディアボロスだった人から発していた電磁波の跡を見える
「……こ、これがアリアちゃんの
聖堂での闘いでも“線”を生み出してブラックトゥースを防ぐ
「どちらかと言えば、《スレッドオブトレイサー》から出た“線” は物質とは言えなくもありませんね」
「どいう
「
「どうぞ。
アリアから許可を貰い、ブラックトゥースの
「ふわぁ~すごいです。硬い
「だからどういう
「私の《アンペインローゼ》みたいに弾力があります。リゼル様も
かつて自分に襲い掛かって来た化物を
確かにそこに実在する実物としての触感を感じられるがそれは金属やガラスの
「この
アリアが右手の人差し指を立てると
「この
こうしてアリアの案に従い、彼女が作り出した怨霊の
◇ ◇ ◇
オルタンシアの北の森への入り口と思われる場所の前に「関係者及び
アリアが作り出したブラックトゥースの
入口の先……森の中は、地面が無かった。水で地面は沈み、目に入る辺り全てが河と化し、森を構成する森林が見た目はマングローブの
「オルタンシア特産の樹木、“ファットマングローブ”ですね」
「ふわ~すごい大きな樹ですね~」
ファットマングローブと呼ばれるプランタンでは見た
「私
アリアの言う通り、河の上、ファットマングローブ林の間を挟んだ至る所に大きめの丸太を縦半分に斬って
「迷路みたいになっていますので足元に気を付けながら迷子にならない
橋には二つか三つの分かれ道があって迷路の
跡の
「さて、この森にはディアボロスが出ると案内の人が言ってました」
「案内の人って中年ハゲのおっさんか?」
「ロトンさんですね。ハゲは
「例えば後ろから襲ってくる場合があります。お
「きゃぁぁぁ!」
ラティナの悲鳴が上がった。
リゼルとアリアは後ろを向くとラティナがマングローブの枝に巻かれて捕まっていた。
「樹が…⁉」
そう、マングローブが生き物の
幹の三つの
『出テ行ケ…! 安ラカナ眠リヲ妨ゲルナ~』
「あれはディアボロスの”トレント”。いえ、マングローブに取り憑いているならば“マングローブトレント”とも言えるでしょう」
「……やっぱりあの樹もディアボロスなのか?」
「はい。トレントは自殺した人の魂が樹に取り憑いたディアボロスでどうやら私達がこの森に踏み入れた
自殺でディアボロスとなってしまったマングローブトレントにとって余り人や大きな動物が立ち寄れない河と化した森は安らげる場所だった。だからこそ足音を立てたり、会話をしたりするリゼル達を安らかなひと時を妨げる“敵”として排除しようと襲い掛かって来た。
「あ…あのっ、お話よりも、私を、早く、助けて貰えませんか。きゃぁん! ダメっ! 胸を…ひゃぁんっ!」
マングローブトレントの
(こいつ、ちゃっかりスケベな奴だな……)
そう思いながらリゼルは右手を黒く硬い鉤爪に変えて、捕らわれたラティナの
「らぁっ‼」
そして硬化した右手を手刀に変え、そのまま、ラティナを捕らえている枝に目掛け、
「風の精霊よ。アリアは願います」
リゼルがラティナを捕まえたトレントの枝を斬り、
「斬り裂く風の刃を起こし……」
一撃を与え終えたリゼルは丸木橋の上に着地した。
「渦を巻いて……」
「きゃぁっ」
斬り裂かれた枝と共にラティナは河へ落ちた。
「
詠唱と
『グギャアアアアアアアアアッ‼』
痛覚が
やがて旋風は消えた。マングローブトレントは未だに身体が残っているが枝に付いていた葉はほとんどが吹き飛ばされ、全身切傷を負わされ、既に虫の息だった。
そこでリゼルが止めに入った。
「《
リゼルの熱を帯びた火山弾如き鉄拳がマングローブトレントを真っ二つに粉砕した。
「ふぅ……」
「リ…リゼル様……」
河に落ちたラティナが両手と胸を丸木橋に乗せてリゼルを呼ぶ。河の深さはラティナの下半身程度までだから
「ん?」
「あれ……」
ラティナが指差す方向に……。
『ウルサイ……』
『眠リヲ妨ゲルキカ!』
『出テ行ケ~!』
敵意が含まれた声々が響くと大量のマングローブの内の数本が動き出した。
それはこの森のマングローブに憑依したトレントの大群だ。
◇ ◇ ◇
「
リゼルの怒りの文句が響いた。
次々と湧いては襲ってくる合計十体のマングローブトレントの集団。だが、リゼルとアリアの奮闘(ついでにラティナも防御技と癒しの
「わ…私達に言われましても……」
ちなみに河に落ちていたラティナの服は濡れていなかった。外套は雨防ぎとして水を弾く生地で出来ていた。その下の服も濡れていないのは
「私が思うには、第一の理由は
「小まめに駆逐してろよ、ここの理術使い
「ですから一度死んだ亡霊であるディアボロスを完全に倒すには
「……
ラティナは悲しげな表情で自殺した人について疑問を口にした。
先程の混戦の最中、ラティナの《
「……生きていくのが辛いと思っていたからでしょう。この国は共和国領と違い、心まで癒す人はいません。ですがラティナ様が気に病む
「……そうですね」
アリアに言われた通り、ラティナは昇天した、マングローブトレントだった霊
「おい、それよりもどーすんだよ。さっきの樹
見れば花嫁姿の怨霊の
「大丈夫です。私が作った
アリアの右手の人差し指を上に上げると
「さぁ、
ラティナ達は隊列の順、今度はリゼルが先頭に、ラティナとアリアが後を追う形に変えて
「ラティナ様、少し質問をしてもよろしいでしょうか」
後ろからアリアがラティナに話しかけて来た。
「はい、
「リゼルさん、
(うっ、しまった!)
「そ…それは……私とリゼル…さんとの関係は……ち、小さい頃からの幼馴染なのです」
「そうですか」
アリアの顔は相変わらず無表情で何考えているのか読めないが取り
(
リゼルも内心、安心した。
樹に憑依したディアボロスによる足止めを食らったがラティナ達は結婚指輪も探し求めて捨てた犯人の
聖天魔物語 ~この厳しく残酷な世界を癒しで救う聖女~ 江戸ノ地雷屋 @ziraiya3
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