第55話合議
伊勢新九郎盛時は一度、話を持ち帰り、幕府にお伺いを立てるという事で帰って行った。
ぽっと出の鳳凰院家が武蔵を完全に領有化したので幕府が追認すれば言う事を聞くと思って居たのか、まさか武蔵に加え相模、伊豆をと言われるなんて思ってもみなかったのか。
恐らく両方だろうな…。
室町幕府って力は持ってなく、幕府の権威を我が物にしようとしている勢力の傀儡状態にされる事でで残ってるようなもんだし。
とりあえず主要な重臣を呼んで今後について話う事にした。
4日前に婚儀の日付とか決めて3日前に各所領に帰ったばかりだから呼び出すのは申し訳ないけどこればっかりは仕方ない。
重臣の意見を聞く姿勢を見せないといけないし、この時代の考え方とか分かって来たと言っても知らない事はまだ多いし、地雷を踏んだら厄介だからしっかりと意見は聞かないと…。
そして重臣に呼び出しをかけて2日後、豊嶋泰経、太田道灌、太田道心、長尾景春、成田正等、三浦時高の一門衆とその嫡男達、そして白子朝信、木戸孝範、宮城政業、上田朝直、豊島泰明、吉良成高、風間元重、武石信康、斎藤真氏が江古田館の広間に集まった。
挨拶もそこそこに、古河公方から和議の使者が来た事とその内容、そして幕府の使者として伊勢盛時が持って来た話を伝えそれぞれに発言を促すと、道心が真っ先に口を開いた。
「恐れながら、殿は既にどのように立ち回るかお決めになっているのでは?」
「確かに大まかな事は考えた。 ただ自分の考えの前に皆の意見を聞きたい」
「では、元は関東管領家に仕えていた某の考えを申しますと、相模、伊豆はさておき、堀越公方を奉じて古河公方を攻めれば山内上杉家と和議を結ぶよう幕府が口を出してくると思われます。 そうなれば関東を統一する際に上杉家が障害になるかと」
「確かに、だが扇谷上杉に居た某からしたら古河公方を討伐しても堀越公方が関東のまつりごとに口を出さない保証はございません。 むしろ討伐後、はれて鎌倉公方となれば上野に引きこもっている山内上杉家も勢いを取りもどす為に手を組む可能制すらございます」
「恐れながら、幕府からの要請となれば断るにも理由があった方がよろしいかと。 それに古河公方と手を組むにしろ明確な取り決めもない以上、双方と条件を詰めたうえでお決めにならなければ無駄に血を流すだけかと…」
景春、道灌が意見を言った後、真氏がそれを言ったら今は何もできないじゃん! と言う発言でそのまま広間には沈黙が流れる。
「確かに真氏殿の言われることはもっともな事、殿のお考えをお聞かせ頂けますか?」
この場で一番の年長者であり扇谷上杉家の元家宰で道灌の父でもある道心がそう言うと、集まった一同が一斉に自分へ視線を送る。
「自分の考えとしては、まずは大森氏を滅ぼし堀越公方を鎌倉へ動座させる。 それと同時に相模、伊豆を手に入れる。 現状堀越公方が伊豆を治めているようなものだから鎌倉へ動座させる事を条件に譲り受けると言う形をとる。 古河公方には鎌倉へ動座させるが実権を持たせていない旨を伝え両者の間で和議を結ばせる。 堀越公方には息子を古河公方の養子にさせる事を条件に、古河公方には表向きは跡継ぎと
して養子に迎えても家督は譲る必要はないと言う条件でだ」
「それでは幕府の命に従ったと言う事になり、あれこれ口出しをされませんか?」
「う~ん、古河公方を討伐しない以上、従ったとは言えないから口出をされる恐れはあるけど、まだ正式に命は受けていない以上、幕府からの命が届く前に事を起こす。 どうせ武蔵の他に相模、伊豆の領有を認めろと言われ以上、すぐには返事は来ないだろう。 来たとしても何か譲歩案を持って来るだけでそれを呑まず相模、伊豆の領有を言い続ければそれだけ時間が稼げる。 その間にかたをつける!」
「確かに幕府としては相模、伊豆は呑めないでしょうから時は稼げますが、果たして古河公方が納得するかどうか?」
「まあ納得はしないだろうね、ただ実権を持たせない事と表向きの和議、それも表向きは養子として、実際の所、人質として堀越公方の息子を手に入れられる以上、利はあるはず、これで暫くは関東が落ち着くはずだからその間に上野から上杉を追い出す」
自分の意見を伝えると、一同はそんなにうまくいくのか? と言った表情や、後々の火種が増えるだけでは? と言った表情を浮かべている。
確かに思い通りにはいかない可能性はあるものの、相模を統一し、堀越公方を鎌倉に動座させ伊豆を手に入れさえすれば後はなんとでもなると思う。
なんせネットで調べたら1491年、あと13年後に堀越公方は死ぬからだ…。
って13年は長いな…。
計算間違えた。
伊勢盛時に伊豆を獲られる前にと思って焦ったけど、史実の伊豆討ち入りは10年以上先だから急ぐ必要は無かった!!!
ただ伊豆の鉱山は早いうちに手に入れたいし、駿河か越後を早めに手中に収めたいから古河公方と堀越公方のゴタゴタは力で抑えつければ良いか。
まずは伊豆、そして原油が眠る駿河か越後、それに越後には佐渡金山もあるし今後、海外との交易をする以上、金はいくらあっても困らない。
いずれは関東圏だけでも貨幣の統一もしたいし。
そう考えると甲斐も手に入れたいな。
まあ甲斐は後で良いけど…。
それにしても広間に集まった重臣たちは納得してないけど、その方針に従うと言った感じなので、詳細を詰め、それぞれに役割を割り振る。
一番面倒な役割をする事になった三浦時高がやっぱり俺が堀越公方の相手するの? って顔してたけど、地理的に仕方ないよね。
頑張って貰おう。
まあ最悪、面倒だったら毒を少しずつ盛って早めにご退場頂けばいいし。
なんか召喚されてから善悪の感覚が無くなってきたような…。
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【お詫び】
お読み頂いております皆様には大変申し訳なく思いますが、誠に勝手ながら本作はここで終了とさせて頂きます。
理由と致しましては、作っていて自分の思い描いたものと違い過ぎるという点が多くなりすぎ、今となっては軌道修正が難しく、改稿して再度作り直したいと言う気持ちが強くなったためです。
誠に手前勝手な事、申し訳ございません。
再度、内容を練り直し、改稿の上、改めてタイトルを変更して再度スタートを切りたいと思います。
ここまでご愛顧頂いた皆様には中途半端どころかまだ始まったばかりにもかかわらずこのような形で終了してしまう事、大変心苦しく思いますが、今暫く改稿版をお待ちいただき改稿版をお楽しみいただければ幸いでございます。
誠に申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。
戦国時代の初期にタイムスリップ? いえ、天下統一の為に異世界へ召喚されたみたいです 武雅 @mizer
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