花咲か神様[四月馬鹿]

名南奈美

花咲か神様[四月馬鹿]


「ここにいたのかよ。探したぜ」

 恋川駅の本屋であれこれ眺めていると、背後からそう言われる。振り向くと赤井喜一。喜一は僕の地元、関西・歌醒県の友達で、小学校の頃からの幼馴染みだった。

「喜一」

 僕は驚いていた。喜一が僕に会うために関東までくることは珍しいことではないが、二週間前に関西で遊んだばかりだから、もうまた遊びたくなったのかと思った。

「栄悟さ」喜一は笑って言う。「暇? いま」

「まあ、暇だね」

「じゃあ花見をしようぜ」

「花見? もう四月も中旬なのに。よくて葉桜だって」

「果たして本当にそうかな?」

 本屋を出ると、僕はまた驚いた。視界に、満開の桜が飛び込んできたからだ。驚くべきはそれだけじゃない――視界の端から端まで、すべての街路樹が麗らかな桜を咲かせていたのである。

 そもそも、桜が咲く樹ではなかったはずなのに……いつから恋川駅前は桜の名所になったんだ?

 見ると、道行く人達もどよめいていて、写真を撮る人もいっぱいいた。僕がおかしくなったんじゃないんだ。これはみんなにとって異常なことなんだ、と少しだけ安心した。

 胸を撫で下ろした僕の隣で、喜一はにやにやと楽しそうにしていた。

「喜一。君、花咲か爺さんか?」

「花咲か爺さん! あっはっは、そりゃいい表現だぜ。そうだな、この能力はたしかに、花咲か爺さんだ」

「……喜一?」

「公園にでも行こう。説明をするから」

 道中に自販機がある。僕がその前で立ち止まると、喜一はカフェオレをおごってくれる。好きな女にもおごらない主義の喜一がそんなことをするのは、とても珍しいことだった。

「もしかして、宝くじにでも当たったの?」

「宝くじねえ。そうと言えなくもないかな」

 午後三時の喜井黙公園には、学校が終わって遊ぶ子供達でいっぱいだった。ベンチすらも空いていなかった。他の公園にしようか、と僕が言うと、ここでいいよ、と喜一は言った。

 そして喜一は、公園の真ん中にある、一番大きな樹の幹に右手を添えた。それは桜の樹だったが、もうすっかり葉桜になっていた。

「見てな」

 喜一は左手の指を鳴らした。

 すると、ぐあんと樹が揺れ始めた。揺れが収まったときには、もう満開の桜の樹になっていた。

「なんだよそれ」と僕は唖然とし、

「すげえ!」とすぐ傍の少年は目を輝かせた。「もう一回やってよ! いまの!」

「ああ、いいぜ」

 少年に促されるまま、喜井黙公園の樹をすべて満開にした喜一は、たくさんの子供に囲まれた。

 背の高い少年達の後ろで背の低い少女が困っていたので、僕は肩車をしてあげた。少女と喜一は、目が合うとにっこりと笑い合った。

「どうして、さくら、つくれるの?」

「俺は神様から力をもらったんだぜ」

 喜一がそんなことを言い出したときは、こいつも子供用にファンタジーな言い回しができるくらいには大人になったのかなと僕は思った。でも、子供達から解放された喜一に公園を出てからもう一度訊くと、

「聞いてなかったのかよ? 神様から力をもらったんだ」

 と真顔で言われた。

「……何教?」

「そういうんじゃなくてさ。その辺の神社の境内に入ってみたら、キリ番をゲットしたらしくて、願いをひとつ叶えてやろうって言われたんだ」

「キリ番って……」

「そんな感じで叶えてもらったやつ、意外といるらしいぞ? みんな信じてもらえないからって公言しないだけでさ」

 そんなのどうとでも言えるだろう。でも、現に喜一は奇跡を起こす力を得ている。それに、近頃は世界的に色々と変な現象が起きたり妙な病気が流行ったりしているから、ひょっとしたら起こってもおかしくないかもしれない、って気持ちにもなってきている。

「まあ、信じるよ。親友の言うことは、疑うものじゃない」

「相変わらず、優しいなあ」

「信じても信じなくても、変わらないし。……でも、桜を咲かせる能力なんて、どうしてまた。もっと他に願うことはなかったの?」

「実は、ただの桜じゃねえんだぜ」そう言って喜一はまた街路樹を桜の樹にした。「なあ、花に触ってみろよ」

「え、うん」

「思いっきり引っ張ってみろ」

「それじゃ桜の花が可哀想だよ」

「いいから。全力でやれよ」

 僕はしぶしぶ、ぐっと引っ張ってみた。

「あれ」

 どれだけ力を込めてみても、どんな風に引いても、花びらはまるで千切れなかった。

「俺の桜は、絶対に散らねえんだ」

「散らない――桜」

「『桜は散るから美しい』なんてしょうもねえ慰めの言葉に、いい加減うんざりしたんだ。だから散らねえ桜をいっぱい作ることにした。なあ、この桜は醜いか?」

「美しいよ」本心だった。「満開の桜は、散ろうと散るまいと美しい」

「あっはっは。そりゃそうだよな」

 桜を眺めていると、なんとなく、一緒に花見をしたときのことを思い出した。高校二年生の春休み、僕の受験先が明確になって、来年の春休みにはもう引っ越すだろうから、思い出作りにって。

 僕と、喜一と……日菜夏で。

 幼馴染み三人組。

「日菜夏には見せたのか?」僕は言った。「あいつ、桜すごい好きだったでしょ」

「ああ。日菜夏な」喜一のテンションが、少しだけ下がったような気がした。「見せてないよ」

「どうして」

「ちょっとタイミングが合わなくてさ」

「そっか」

 まあ、日菜夏は僕や喜一と違って社会人だ。予定を合わせるのも難しいのだろう。

「それより」喜一は言う。「これからお前の家に行っていいか?」

「ああ、いいよ。散らかってるけど」

「で、酒呑まねえ?」

「……なんかあったの?」

「ちょっとな」

 喜一が酒を呑みたがるときは、酒の勢いで打ち明けたいことがあるサインだ。高校一年生のとき、日菜夏に告ったけど「友達のままでいよう」とフラれたことを打ち明けられた日はびっくりしたなあ、と僕は懐かしむ。その次は親の不倫を知っちゃった話だっけ。

 今回はどんな話かなあ、と思いながら宅飲みをしていると、頬の赤い喜一が言う。

 リュックから診断書を出しながら。

「俺さあ、明日死ぬんだよ」



 寿命七日病。

 発症から七日後にぱたりと心臓が停まって死ぬ――ライト文芸でも流石にないような奇病の発症が、世界的に報告されている。現象として目されてから、もう千人も亡くなっているんだっけ? 

 いつだって事実は、小説より奇にして雑だ。

「医学の進歩もまた、めざましいよなあ――予兆こそわからねえが、発病したかどうかは、血を採ればわかるそうだ」

 喜一はそう言って、笑った。なんだか、親戚がそういう病気なんだよって話をしているように聞こえて、目の前の喜一がかかっているとはにわかに信じがたかった。

 喜一が死ぬ。明日、喜一の心臓が停まる。二十歳になったら一緒に飲み歩こうと言っていたのに。まだ秘密の飲酒しかできていないのに。僕はいくつか、喜一と大手を振って飲みに行きたい店をメモしてあるのに。

「……栄悟、そんな悲しそうな顔をするなよ。って嬉しそうな顔されても嫌だけどさ。俺はもう、明日と言わずさっさと死にたいくらいだぜ?」

「悲しそうな顔をしてるんじゃない。悲しんでるんだ。僕は。僕は喜一を親友だと思っているから、悲しいし、寂しいんだよ」

「そっか」

「日菜夏は、知ってるのかよ」

「うん。言った」

 何か吹っ切れたような目だ。酒の影響だけじゃなくて。そうだ、そもそも会ってすぐだって、どこか悟ったような空気があった。

 喜一はもう受け入れているのだ。自分の死を。それがどうにもならないということを。散る桜であることを。そうだ、『桜は散るから美しい』を慰めの言葉と捉えているのは、実際に言われたのかもしれない。

 ……うん?

「ねえ、喜一」

「なんだよ、栄悟」

「神様から願いを叶えてやろうって言われたの、病気になった後か?」

「……よくわかったな」

「だったら、どうして病気を治してくださいって言わなかったんだよ。叶えられなかったのか?」

「いや。たぶん、叶えることはできたんじゃねえかなあ」

「じゃあ、言えばよかったのに。実は、ずっと前から死にたかったっていうのか?」

「栄悟ってさ」喜一が言う。「来週、絶対に自分が死ぬってわかってたら、それまでどう過ごす?」

 どう過ごすだろう? まず、両親やバイト先、知り合いには言うだろう。そのあと、感謝とか、ずっと言いたかったこととかを伝えるだろう。後悔のないように。行ってみたかった場所にも金を惜しまず行くだろうし、食べたかったものを食べる。観ていなかった映画を借りて観るだろうし、やってみたかったコーディネートを試すかもしれない。それから、また僕と喜一と日菜夏で一日中遊びたい。そして、やっぱり毎晩、泣いて過ごすんじゃないだろうか。

 という風に答えると、

「素直だよな、お前」

 と喜一は笑う。

「それなら喜一はどう過ごす……過ごしたんだ?」

「俺はさ、栄悟みたいに綺麗にすっきり終わろうなんて思えなかったんだ。だって、どんな風に頑張ったって、誰に何をしたって、どうせ死ぬんだから。どんな経験をしたって、死んだらさっぱり忘れるんだから」

 何もかも無意味だって。

 そう、思った。

「だから俺は頑張らなかった。だから俺は腐った。そして、俺はでかい罪を犯した」

「は、犯罪を? なんで、そんな馬鹿なこと!」

「人が犯罪をしない理由って、ふたつあると思うんだ。ひとつは刑や前科によって立場や生活が危うくなるかもしれないから、もうひとつは自責の念をずっと引きずるかもしれないから。どうせすぐ死ぬ俺は、どっちも大したリスクじゃなかった。だから、自棄もあってタガが外れたんだよ」

「……そんな」

 僕は信じられない。目の前の幼馴染みが、親友が、犯罪者でもあるなんて。あの喜一が。そりゃあ、未成年飲酒を先に始めたのも、僕をそれに誘ったのも喜一だけれど。でも。

 大きな罪。往々にして、それは誰かを傷つけている。

「そのあとだ。そのあと、俺の元に神様がやってきた。なんでもひとつだけ叶えるって言われた。でもさ、未来がないからこそ罪を犯したのに、今更、未来を願ってどうするんだよ? なんてタイミングだ、って思ったよ」

「それでもさ、喜一」僕は言う。「喜一は、未来を願うべきだったと思う。罪は償うべきだ。生きて償うんだ。被害者にいっぱい謝るんだ」

「俺が生きているべきだと思うのかよ、栄悟」

「死んでいい人なんて、生きているべきでない人なんていない。ましてや君は僕の親友だ。罪を負っていても……死んだほうがいいなんて思わない」

「どんな罪でもかよ」

「ああ。日菜夏だってきっと、喜一が罪を負ったから命を諦めるなんて納得しないさ」

「俺がその日菜夏をレイプしたって言ってもか?」

「……え?」

「強制性交等罪。俺の罪だ。でかいだろ、インパクト」

「ほ、ほん、本気で」声が震える。動悸が激しい。尋常じゃいられない。「本気で……言ってるのかよ」

「うん。日菜夏、めちゃくちゃ泣いてた。うるさいから殴っちゃった」喜一は力なく笑う。「なあ、これでも俺は死ぬべきじゃないって思うか? 栄悟」

「……僕は」

 それでも死ぬべき人なんて。

 僕は日菜夏のことを思い出す。日菜夏の綺麗な肌を思い出す。楽しそうな声や照れた笑顔を思い出す。彼氏できないまま社会人になっちゃったよ、と苦笑していたことを思い出す。

 そんな彼女に、じゃあ僕と、と言おうとして言えなかった二週間前のことを思い出す。

「俺は、そうは思わねえよ」と喜一。「だから俺は、生き延びることを選ばなかった。……本当はすぐ自分で死ねばよかったのかもしれないし、さっさと殺してくださいって願えばよかったかもしれないけれど、それはビビっちゃったよ。死にたいくせに、死ぬのが怖いんだな」

 僕は吐いた。

 吐瀉物を見つめたまましばらく呆然としてしまった。床を拭く気になる頃には、喜一はもう僕の家にはいなかった。



 何もできないまま、夜になる。通報したり、喜一を探したり、日菜夏に声をかけたり、色々としたほうがいいんじゃないかと思い浮かぶけれど、いやでも、と押し込めてしまう。ぎらぎらと胸裏で渦巻く生ぬるくて気持ち悪い感情がとにかく嫌だ。嘔吐しても出ていかない。

「……狭い、ゲロ臭い部屋のなかにいるからいけない」

 僕は着替えて、アパートから出る。

 夜の住宅街を歩いていると、神社の前を通りかかる。恋川神社。

 何かを楽しむ気持ちになれないから、落ち着ける場所に行きたい。そう思っていたから、僕は石の階段を登り、境内に足を踏み入れた。

「おめでとう」

 突然、目の前に男性が現れた。三十歳くらいに見える色男だった。男は蛍光塗料でも塗っているみたいに、闇夜でぼんやりと光っていた。驚きのあまり、尻餅をつく。

「どなたですか」

「俺は神様。全知じゃないが全能の神だよ。さて、お前は記念すべき二百二十二億二百……まあ、二がいっぱい並ぶキリ番を踏んだ参拝者だ」

「キリ番……神様……まさか」

「全能の神である俺が、ひとつだけ、なんでも、お前の願いを叶えてやる」

 ひとつだけ。

 喜一の例を思うと――絵空事めいた願いだって、いいのだろう。

 現状では不治の病と言われている、寿命七日病を治すことだって……きっと。

 そうだ。それ以外に何を願う必要がある? 喜一は死ぬべきじゃない。だって死ぬべき人なんていない。喜一は日菜夏を深く傷つけた罪を償うべきだ。償うために生きるべきだ。

 迷うことなんて。

「……まあ、好きに迷えばいい。いつまでも待ってやるよ」

 全能の神とやらはそう言った――僕は、迷っている?

 何に?


 喜一を死なせないことに対して?


 僕は理解して、そして震える。また吐きそうになるけれど、神社の境内だから、我慢する。

 そうだ。僕は。思ったんだ、あのとき。

 喜一が自殺を怖がっていると知ったとき。

 ふざけんなよ、って思ったんだ。

 まだ自分が可愛いのかよ、って思ってしまったんだ。

 死ねばいいのに、って。

 そしてすぐに、そんなことを思ってしまった自分が、理性と反射の矛盾が、気持ち悪くなって。

「違う、違う、違う」僕は反射的に言う。拒む。否定する。「違うんだ。喜一のためなんだ。喜一だって言っていた。自責の念を引きずるって。きっと喜一はもう死んだほうが幸せなんだ。だから僕は間違っていない。僕はブレていない。僕は」

 そして僕は思い至る。

 言うべき願いを、発想する。

「願いが、決まりました」頭のなかで推敲しながら僕は言う。

「ふむ。言ってみな」

「僕の親友の喜一が、寿命七日病を確認してから行ったすべてのことを、なかったことにしてください。喜一のやった悪いことも、喜一の行動の影響も、全部すっかり嘘にしてしまってください」

「植物の変化と、撮られた写真と……人々の記憶と、心身への影響をなくすだけであれば可能だな。その場合、今日のお前の記憶も消えてしまうが、問題はないんだな?」

「ありません」

 忘れさせてください。

 それは僕の本心のなかで、唯一、受け入れることのできる気持ちだった。



 朝がきて、昼になって、喜一のお母さんから電話がくる。

 喜一が夜明け頃に寿命七日病で亡くなってしまったそうだ。道端で倒れて、病院に運ばれたものの心臓を回復させることはできなかったという。彼のリュックには診断書が入っていたらしい。

「えっ!? き、喜一が……そんな……信じられない!」

 まさか、自分の親友があの寿命七日病になっていたなんて……二週間前に遊んだとはいえ、死ぬ前にもう一回くらい会っておきたかったなあ、と胸が苦しくなる。

『喜一も、栄悟くんに会いたかったんだと思う』涙ぐみながら喜一のお母さんが言う。『喜一、関東で倒れたみたいだから』

「関東に来ていたんですか!?」

『うん。……昨日のことはよく覚えていないんだけど、起きたらどこにもいなくて、心配してたら恋川の病院から連絡があったの。ふう、ぐ、もっと抱きしめてあげるんだった、うう』

「あの……、日菜夏には、伝えましたか」

『ううん、ふす、これから』

「僕が伝えます。おばさんは休んでください」

『……ありがとう、栄悟くん』

 電話を終える。僕は脱力感に襲われる。やるせなさのあまり上手く動けなくなったので、ひとまず寝る。起きたら午後七時。日菜夏に電話をかける。

『もしもし。栄悟だよね?』

「栄悟だよ。仕事終わった?」

『うん。帰ってるところ。どうしたの?』

「あのさ、訃報なんだけど」

『……うん、続けて』

「喜一が寿命七日病で亡くなった」

『え。……え? 嘘? 喜一くんが?』

「さっき、喜一のお母さんから連絡があったんだ」

『信じられない。だって、……そんな。……喜一くん』

「僕も、信じられないよ。全然。でも、本当のことなんだ」

 日菜夏は泣き出す。僕は自分が関東にいることが歯痒くなる。いますぐ慰めに行きたいのに。一緒に泣きに行きたいのに。

 喜一。

 君が死んで、君のお母さんも日菜夏も、僕も、こんなに悲しんでいるよ。



 喜一の命日から一年が経つ。僕は帰省して、日菜夏と一緒に墓参りをする。

 ふたりで供え物をして、祈りを捧げる。墓石の森を抜けて林道を歩く。桜の樹はすっかり青々と繁っていて、たまに葉桜があるくらいだ。

 葉桜にも葉桜の美しさはあるけれど、満開の桜が好きな日菜夏は、あーあ、と息を漏らす。

「散らない桜があったらいいのに」

「桜は散るから美しいんだよ」

「美しさなんて人それぞれでしょう? わたしは、散らないほうが美しいと思う」それから日菜夏は目を細める。「命もまた、儚くないほうがいいって思うよ。死んでもいい命なんてないもん。喜一くんも、死なないでほしかった」

「……そうだね」

「ねえ、ガキっぽい話だけどさ――もしも、神様から何かひとつ願いを叶えてあげるって言われたら、どうする?」

「そりゃあ、喜一を生き返らせるよ」

「うん。わたしも、そうする」

 僕達はそれからも夢のような、エイプリルフールみたいにくだらないことを交わしながら林道を抜ける。僕の実家や日菜夏の家があるほうまで歩いている途中、視界の端に神社を認める。

「久しぶりに、こっちの神社にも参ってみようかな」

「いいんじゃない? わたしも、今年はまだ行ってなかったし、ついていくよ」

 誰が死んでも、春は暖かい。

 僕達は心地よい風を感じながら、今年は誰も死なないように祈るつもりで、境内に足を踏み入れた。




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