N.O.R.

春嵐

N.O.R.

『LO1が生存しているかどうかの確認だ。それ以外はどうでもいい』


 通信。同じことを、何度も繰り返している。


「Ki2、LO2了解」


「さ、行くよ」


 通信。切れた。

 彼が生きているなんて。ありえない。


「生きてるんすかね、やっぱり」


「そんなわけないでしょ」


 LO1は、わたしが殺した。わたしが。跡形もなく。


「現場に残された文字。NOR、って書いてたらしいです」


「意味がある言葉じゃないでしょ。たまたま血が飛び散っただけよ」


「生きててほしいとか、そういうの、ないんですか。恋人だったって」


「それ以上喋り続けるのなら、殺す」


 黙った。どうやら、こいつはまだ死にたくないらしい。

 彼は生きていない。殺したのはわたし。

 ちゃんと偽装もしたから。

 彼は、この世にいない。


「あっ」


 着信。通信ではない。


「ごめん先に行って。重要どころから連絡来たわ」


 黙ったまま、了解のサイン。いなくなるのを確認してから、通信を開く。


『お醤油が切れました。あと海苔。できれば卵もほしい』


 彼からの連絡。


「死人が飯食ってるわね」


 たまごかけごはんに海苔か。


「しかたないわ」


 了解、と。

 彼は、この世にいない。わたしが、そう偽装した。彼は、死んだことになってるけど。わたしの部屋にいる。たまごかけごはん食ってる。


「あ。そうだ」


 NORって、なに?


 返信は早かった。


『NORi』


「海苔かよ」

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N.O.R. 春嵐 @aiot3110

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