両想いからの……独占欲強めな女子高生

 人の心は成長する。

 心が子供だった、子供のままだったのは俺のほうだ。


「美玲、お前のことが好きだ」

「うん、やっと言ってくれたね」

「こんな情けなくてキモイおじさんだけど……付き合って欲しい」

「うん。キモいけど……ね」

「そして、お前が高校を卒業したら……」


 俺が言い終わる前に、満面の笑みで勢いよく抱きついてくる美玲。


「嬉しいっ!おじさん、大好きーーーーーっっ!!」


 ――ドーーーンッ!


 という擬音がつきそうなほどぶつかってくる美玲。


 ぐはっっ!


 さすが女子高生だ。

 俺は飛び込んでくる美玲を支えきれずに後ろに倒れてしまった。


「最後まで言わせろ。今はまだ結婚はできない。お前もまだ高校の途中だから、いきなり結婚というのは無理があるだろ?それに今の俺はそこまで気持ちはまだ整理できていない」

「……整理?」


 拒絶したわけじゃない。

「今は、まだ」ということだ。


「勘違いするな。一年半……お前が高校を卒業するまで、残り一年半で俺はお前と結婚するよう気持ちを整理する。そして、お前が高校を卒業したら結婚しよう。それでいいか?」

「うん……うんっ!」

「喜ぶのはまだ早いぞ?まずはお前の母親に結婚を前提に付き合うことを報告しなければいけない。驚かれるとは思うが、反対はしてこないだろう」

「そう、だよね……うん、分かった。とりあえず……私のお母さんに報告、だね」


 それが厄介なんだよな……。

 美帆と俺が付き合うならいざ知らず、まさか娘と元カレが付き合うって言うんだから。


 よしよしと頭を撫でてやると、手を動かすたびに美玲の髪の香りが俺の鼻をくすぐり、彼女はその感触を楽しんでいる。


「ん……」


 気持ちよさそうな声を漏らす美玲。

 奇遇だな。俺もすごく気持ちがいい。お互いに好きって気持ちを知ったから余計にそう感じるのかもしれない。最近はキモイって言って撫でさせてくれなかったからな。


「キモイって言わないんだな」

「あっ、あれは違うの……本当は撫でて……欲しかったの」

「なら、今度は街中でも撫でてやろう」

「……バカ」


 恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、弱々しい視線を向けてきた。

 いつもなら「キモイ」と睨まれるところなのに……なんだ、この……反応は。

 可愛すぎるだろ。


「あのね、おじさん。おじさんに撫でられている時、すごく幸せな気持ちになるの……」


 俺が見惚れていると、美玲は顔を赤くしたまま。


「私の好きって気持ちと、おじさんの好きって気持ちが混ざり合って溶けているような……そんな不思議な感じ。後、すごく恥ずかしいけど言うね。この撫でてる手は私のなんだ。私はおじさんのモノになったんだなって思ったの……なんかキモイよね、私って」


 今まで散々、俺にキモイと言っていた美玲と同じ人間とは思えない。

 だから俺は美玲をぎゅっと抱きしめた。


「あ……」

「キモイが、俺も同じことを考えていた。お前は俺のモノ、オレの女だ」

「うん……うんっ」


 美玲は何度も頷くと、顔をあげて正面から俺を見据える。


「ねえ、おじさん……」


 そう言うと、彼女はいきなり顔を寄せ、唇を重ねてきた。

 突然のことで驚いたが、たっぷり数秒、柔らかくて蕩けるような唇の感触が伝わってくる。


「……やっぱり我慢できなかった」 


 ようやく唇を離した美玲は、恥ずかしがりながらも、嬉しそうな表情をしていた。

 俺の胸に添える指はわずかに震えている。


「美玲……俺からもさせて欲しい」


 俺の言葉に小さく頷くと、美玲はそっと瞳を閉じた。

 柔らかそうで艶っぽく濡れた唇。


 先ほどの美玲のキスは決して上手ではない。

 たどたどしく、ぎこちない。

 でも、美玲の想いがしっかりと伝わってきた。


 なら、俺はその気持ちに応えるだけ。


 俺は美玲を抱き寄せ、想いを確かめるように唇を重ね合わせた。


「ん……」


 少しでも長く唇を重ね続けようとしたが、俺の予想に反して美玲は唇を押し付けてくる。

 その様子が堪らなく可愛いと感じた俺は、少し意地悪……もとい、大人のキスをしてやることにした。

 唇をこじ開け、俺は舌を差し込む。

 すると彼女は少し驚いたような顔をするが、何をするのか分かったように自らの舌を絡め始めてきた。


「おじさん……っ!んっ……!んんっ……!はむっ……」


 キス自体も初めてのはず。

 それでもその感触が心地よいのか、美玲は唇を重ね、舌を絡ませる行為に没頭している。


「はむっ……!んんっ……!はむっ……」


 それはまるで子供のようですごく可愛い。

 俺からしたことだが、いつの間にか美玲主導になっている。

 つくづくマウントを取るのが好きな女だ。


「ぷはっ!」


 ……どれくらい続いただろう。

 そろそろ息が苦しくなったところで、美玲が口を離した。

 彼女は満足したように、艶めかしく舌で唇を舐める。


「はぁ、はぁ……」


 二人一緒に息を吐きながら、見つめ合う。


「キス……しちゃった」

「どんな気分だ?」

「おじさんの舌と唾液、すごく甘くて美味しいの……もっと欲しいくらい」

「お前って結構、積極的なんだな……」


 かぁっと顔を真っ赤にする美玲。


「だって、ずっと我慢してたんだもん……。ねえ、おじさんはエッチな子は嫌い?」


 上目遣いとはずるい。

 っていうか、俺はエッチとは言ってない、積極的だ。


「もっとエッチなくらいがちょうどいいな」


 と、俺は少し捲れた彼女の太腿あたりに視線を落とす。

 膝枕してもらうのもアリだな。


「うわ、その目マジすぎて、キモいんだけど……」


 いつも通りのキモイ発言。

 でも心なしか、今日はどこか嬉しそうに感じられた。


 ……くっそ可愛すぎるだろ。




 顔を合わせれば、「キモイ」と罵倒してきた女子高生。

 嫌われていると思っていた同級生の娘。


 こうして美玲は俺と付き合うことになった。





「……でも、そんなおじさんが好き」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「おじさん、キモイ」と、非難してくる女子高生は元カノの娘なんだが…… あおいゆき @aoi_yuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ