舞台は神奈川の中学校で季節は夏。
語り手の少女は北海道から転校してきたやさしい男の子に恋をする。
典型的な青春物の背景だが冒頭の一文
「明宏とわたしは、樹海でセックスをした」
が魔女の不吉な呪文のように作品のトーンを決めている。
中学生らしい明るい場面であっても、そこに影が差しているように感じる。
悲恋もの、とはちがうし、切ないといったら軽い。
これは十代の少年と少女が短い時間を全力で生きた証の物語だった。
偉大なもの、あるいは無垢なものが卑小なものたちに押しつぶされる物語だが、それでも二人は勝ったのだと思いたい。
このスケールの物語を短編にまとめた作者の手際と志しに拍手を送りたい。
素晴らしい短編です。ぜひご一読ください。