第19話 涙
ヒロトは、先程まで空中にいた。
胃の中に違和感を感じる。どうしたものか。
「龍神には矢は刺せたかい?」
東雲は落ち着いた顔で気遣うようにヒロトの顔を覗いた。
「あっ!はい!でも、鱗が固くていつ抜けるのか。」
「んじゃ。急いで帳を用意しなきゃね。」
韋駄天弓を使い、龍神を地上に下ろす作戦だ。対になっている矢片方の矢を抜けば、飛ばした矢が戻ってくる。それを所持している物も同時に。よく考えるとめちゃめちゃ便利だ。矢の届く範囲ならどこでもドアのように瞬間移動ができるのだ。
風晴は、五寸釘を地面に刺し、六芒星を描いた。しかし、
「風晴さん!!そんなちっちゃくていいのかよ!さっき見てきたけどとんでもない大きさだったから!!」
ヒロトは、なにか認識が違っていると感じ、ジェスチャーで大袈裟に表現した。
「あっははははははははは!ヒロト君、落ち着いて、風晴には先程見せたけど、ただであれを地上に下ろしたら大変な事になるのは承知さ!」
「東雲さん。。。笑いすぎでしょ。。。」
「そ!龍神の封印にはこれを使う!」
風晴が取り出したのは、理科の実験で使うフラスコのような小さな瓶だった。普通の瓶とは違いゴムのような弾力がある。
「んじゃあ、ヒロくん。これ、持ってて。」
「な、なんですかこれ。」
「まぁ〜。説明は難しいなぁ。魔封波みたいなもん?」
「それアウトなんじゃ。。。」
「はいはいー。これにさっきの矢を刺して〜。」
「え、こ、こう?。。。」
「うんうん。それを、えいっ!」
バキッ!!!
矢が折れた瞬間、とてつもない質量を肌で感じた。その瓶は、赤くマグマのように熱くなり耐えられず、落とした。
「あっっっっつ!!!!!」
周りの空気を熱し、蒸気を拭きながらその瓶はぬいぐるみのような龍を形作る。
「はわわっ!!!!」
水蒸気が溢れる中、一味違った龍神の姿に驚いたのは榊だった。
「かっわいいい!!!!!」
なんと龍神は、本当にぬいぐるみのようなサイズ感になっていた。
「なんじゃぁ!!!!!??!?」
恐ろしい姿はどこへやら龍神は短い手足をばたつかせとてと驚いていた。
「え、、、、。これってさっきの。。」
「ぶっひゃははははははははは!!!」
淡々と説明する東雲を他所に爆笑する風晴
「・・・。。」
目を輝かせ、言葉を思い出している榊
「・・・。。。!?!?」
あまりにもじっと見られるので思わず龍神も見返した。すると榊はふん。と鼻息を立てて、龍神を抱っこした。
「ななななんじゃこの娘は!!やめぬか!!」
じたばたしても榊は離さなかった。寧ろ抱き寄せ匂いまで嗅いでいるではないか。
「ううううう〜ん!いい匂い〜〜🎶」
「うぎぃーーー!離せ!話せと言うておろう!!離せ!離せ。離せ、ふ、ふふふふふ。」
「龍神の野郎だいぶ懐いたな。」
「そうっすね。チワワと変わんないかも。」
「こらこら榊ちゃん!ちっちゃくても災いをもたらす龍神だよ。敬意を払って、」
「ま、まぁ!よいよい!よいのじゃ!人間の娘も悪気がある訳ではあるまい。我は今大変機嫌がよろしい。これの程度であれば神の恩恵と思うが良いぞ、ぬふ。ぬふふふふ。」
「なんか、、、きもちわりぃな。」
蛍人 稲荷 壱鬼 @kyogenheki
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