第18話 龍神
「いいかい?龍神に帰ってもらうにはその目玉をきっちりと返す必要がある。」
「はい!!」
すさまじい豪雨の中、東雲は韋駄天弓を構えヒロトに確認を取っていた。
「さて、矢じりは持ってるね?」
「アッ、はい!!」
「榊ちゃん?龍神は今どのあたりに?」
「もう少しです!!」
何か黒い影が、曇天の中かき回すように動いている。
「じゃあ。いくよ。」
「は、、、、、アーッツ!!」
風を切り、天へ向けられた弓矢は激しく震えながら龍神を目掛け放たれた。
まさに瞬きする間に、空にいた。足の踏み場もなく、地面ははるか下。落ちるまでに時間がかかることを予想すればさほど怖くなかった。
でも、眼前には龍神がいた。鱗の一つ一つは大きく鰐の様に整った顎。つやのあるピアノ線がたくさん収束したような髭や鬣。
迷わず、龍神へ目玉を差し出した。だが、、、。
「眼が、、、、、。ついてるぞ!?だったらこれは誰の、、。」
飛び立つ前、風晴は目玉が何を意味しているか考えていた。
誰とも接触したことのないヒロトがなぜ龍神の眼を持っていたのか。召喚の媒体はほかにあるはずだ。と。
「でも、その場合ただの無駄足ですよね?」
「いいや、最悪を想定した動きはどんなイレギュラーでも対応可能にできる。」
「ヒロ君にはさ、弓矢を2本預けておくよ。」
持っていた弓矢を強く握りしめた。
「影!!!!こい!!」
黒い影はヒロトの背後、前かがみになったヒロトの足をつかみ龍神の背に放り投げた。
「ああああ!!!影!?そういう感じいいい???あああああ!!!!」
何とか龍神の背に飛び乗ることができた。
「鱗が雨で滑る!!!」
不意を突かれた龍神はその体を大きく動かし振り払った。
「っくっそ!!!!」
ヒロトは弓矢を龍神の背に刺し、そのまま滑り落ちた。
「うううううううあああわわわああああああ!!!!!」
龍神は、韋駄天弓を刺された痛みから大きな咆哮を上げた。雷のような豪風のような声で。
「どうやら、風晴の予感が当たっていたようだね。」
バキッ!!!!
上空から地上へとなんの痛みもなく帰ってきたヒロトは、いまだに瞳孔を開かせ落ち着かない表情だった。
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