第17話 災い
雨、こんなにもせわしなく降るのは今まであっただろうか。豪雨被害は何度か経験したがその度に気圧による頭痛に悩まされた。がしかしこれほどまでに大降りで寒い雨は,やはりなかった。
五人囃子というその道のプロの東雲と合流し、これからその災害をもたらすでっかいドラゴンとどうやらと戦うらしい。
「君の使い魔は強いね。あの数を平気で打ちのめすなんて!すごく興味を持ったよ。いろいろと教えてくれるかい?」
東雲は、黒い影が屠った魔物の亡骸を見ながら言った。
「あ、あの。えっとですね。。」
「それについてもまだ調査中だよ。使い魔なんてそんなレベルじゃないのは確かだね。」
風晴がタオルで濡れた顔を拭いていた。
「龍神の沈静の前に、作戦を立てよう。」
東雲さんは協会の人たちから特別に派遣されたらしく、協会もこの状態を重く見ているらしい。
「おそらく今回は誰かの陰謀だと思って間違いないだろう。」
「そうだね。僕がそれに気づけずに結界を解いてしまうなんてね。」
東雲は、自虐を放つような風晴をみて、そのまま続けた。
「まずは、あの龍神を降ろすことから始めよう。あんなに宙を舞われてちゃ対処のいようがないからね。」
「何を企んでるか知らないけど。被害はこれ以上出さないようにしないとね。」
少し間が開いて、そういえばずっとポケットに何か入っていることに気が付いた。
(なんだろ、なにか入れたっけか)
ポケットの中には、鈍く光り輝く石が入っていた。
(うわ、ナニコレ)
(石?、いやこれは眼球だ、)
「え!!!?ちょっと!?ヒロ君!?!?!」
三人は身を乗り出し、飛び出しそうなくらいに大きく目を開け驚いた。
「龍神って、、、もしかしてこれを探してるってこと!?」
榊はぐっとこちらに接近し目を輝かせた。
「それで間違いないようだね。ははははっ!なんで君が持ってるんだい!はははは!」
「そ、そんなこと言われたって・・・」
「そんな、え〇りか〇きみたいなこと言わなくていいから。何はともあれ今回は無事に帰ってもらえそうだね。」
風晴は、そういって笑うと天空を見つめ暗雲で蠢く龍を見た。
「それにしても寒くないか?」
切り出したのは東雲だった。異常な気温に思えたのであろうか。僕らは、まあ、そういえば確かに寒いけど。
雨のせいで急激に気温が下がったのだと思っていた。
まずは、龍神に眼球を返すべく空への道を考えている最中だ。韋駄天弓は、どうやら上空には向いていないらしく飛べても戻ってきたときには、まず両足の骨は確実に折れるもしくはつぶれるといわれた。
それまでの過程は正直悩むとこではなかったが問題はそのあとだった。
「とりあえず君は、ちゃんと目玉返さないとね。」
「は!はい。」
その時だった。
ちょうど西側少し開けた場所に、爆発のような音がさく裂した。
皆がその方面を見たときは、雨でしけった土が宙を舞っていた。
「ええ!!霰!?でかすぎじゃない?」
直径でいうと2メートルあるかないかの氷のつぶてが地面に突き刺さっていた。
続いて、二発目、三発目と降り注いだ。土にもコンクリートにも突き刺さり、当たらないことを願うばかりだった。
四発目の時だろうか、車に向けての氷弾が当たる寸前、風晴が身を挺して砕いた。
「車検終わったばっかだから!!!やめろよ!!!」
「!!??」
風晴のユーモアセンスも氷ついた。なぜなら、さらなる無数の霰が押し寄せているのだから。
「影!!守ってくれ!!」
黒い影は、すぐに前線に出た。無数の球を打ち砕いていく。
だが次第にその守りも長くはもたない。合わせて風晴も加勢をした。細かく割れた霰があたりに飛び散る。細かくといってもソフトボールや野球の球ぐらいでたまにバスケットボール並みのものもある。
風晴が掃った氷の球は起動を大きく外れ、東雲のもとに向かった。
「東雲!!!!!」
はっとした時はすでにそちらに氷弾が牙を向いていた。
「東雲さん危ない!!」
飛び込んだのは榊だった。その手は熱せられた鉄のように赤く燃えていて、氷を受け止める前に蒸発させた。
「君も、使い魔を!?」
榊は、自分でもびっくりしたのだろう、ナイスセーブを見せたが同様で涙目で照れていた。
「ともかくありがとう!!龍神がどうやら催促に来たようだ。」
眼球が脈打っている。正直気持ち悪い。
龍の雄たけびが聞こえる。轟音に地響き、耳が麻痺してきそうだ。
冷気に包まれた町はどこか異世界のようで心が少しだけステップを踏んでいるような。そんな気分だった。
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