第3.5話【villains elegy-アクニンドモノバンカ-】(6)
「おや……珍しいですね、こんな夜更けに。見た所皆々様、いたって健康に見えるのですが。診療とは別の御用でお越しでしょうか?」
銀縁の眼鏡をかけ白衣を
「…………」
「…………」
「…………」
否、正確には答えないのでは答えられない。
奇しくも彼らは、皆同じ事を考えていた。
「ふむ。どうやら皆さまの神妙な面持ちを見る限り、ある程度記憶は引き継がれているようですね。私はどうにも
「あれは、催眠術の類か?」
「いや、違うだろ。ショーイチもうちもこのジジイも、確実に殺られてた筈だ」
「だのう。いやはや、
何かにつけて犬猿の仲である
すると、そこで。
「まきもどしたんだよ」
「「「ッッッ!!?」」」
三人の魔術師の背後へと、いつの間にか
「あのままだとおさまりがつかないと思ったから、というよりもむしろ。おじさんたちは特別なんでしょう? だから、分かったんだ。ぼくの中にいるアレがなんなのかも、そしてぼくが持っている力がどんなものかっていうのも、分かっちゃたんだ」
子供らしさを微塵も匂わせない
「だから、お父さん。今までごめんね、いっぱい痛いことしちゃって。でも大丈夫、もう分かったから。これからはお父さんに後始末させることはたぶん、無いと思う」
「
言葉に詰まる
「で、だよ。もうおじさんたちも分かったでしょ? 自分たちじゃどうしようもないくらいに力の差があるってことがさ。今のぼくなら、アレが出てくる前におじさん達をせん
殺害対象である幼子から憐れみを受ける――魔術師としての
「ガキに言われちゃ世話ねぇな。つっても、確かにてめぇの中にいるアレはうちらの手に負えねぇバケモンだっつーのは正しい。でもよーだとしてもよー」
「要はアレが出てくる前に行動不能にしたら良いのじゃろ。であれば儂らにも勝機はあるし、これより先一切の油断なく迅速に事を運べば無問題じゃて」
「ですね。死ぬのが発動条件と仮定するならば、殺さず行動不能にしてしまえばよいだけのことです」
「往生際わるっ! はぁーあ。大人って大変なんだね。
敵意を剥き出しにした襲撃者に対し、
「その辺にしておきなさい。彼らはどうしようもない無法者です、これ以上刺激するのはよろしくないし、それに小っちゃい内から汚い言葉をみだりに使うものじゃありませんよ」
「でもお父さん」
「大丈夫。お前がどうこうしなくても、お父さんがこの場をなんとかしてみせるから。先に家に戻ってなさい」
我が子の肩を優しく叩きながら、この場から立ち去るよう
「はぁん。手も足も出ずにボコられてた癖に子供の前だとそんな事言えるたぁ、親って奴はもの凄い見栄っ張りなんだなぁオイ」
額に手をあてけらけらと笑う
「貴方はまだ若い。説明したところで分からないでしょう。だが……」
「は……!?」
天の左腕と両膝から下の箇所が、赤黒く変色し、ボコボコと音を立てながら
「血の通った息子を目の前で嬲られて、
衣服を突き破り
「魔術師ではないが只の人間でもない。一体あなた何なんですか?」
「答える必要は、ない」
「これがお父さんの本気かぁ。うろ覚えだけど、改めてすごいね。でも、たぶんそれでもちょっぴりしんどいと思うから、これはアドバイス」
「気持ち悪くてくさいおじさんは左手から見えない透明なヒモみたいな束を伸ばしてくるよ。捕まっちゃうと抜け出すのにひと苦労しそうだし、ムチみたいにして叩きつける時には殺傷力も上がってるから気を付けて。基本見えないけど、腕の動きと連動してるから注意すればかわせるはずだよ」
「あのヒゲがもじゃもじゃしたおじいさんは、土砂や岩石で構築した大きな腕とか脚とかを地面からたくさん出せるよ。一度に出せる数は十数体が限界だと思うけど、囲まれると面倒だし先に本体を潰しちゃうのが楽かも」
「でもってあのお姉さんが一番厄介。あれは圧縮した空気……を纏っているのかな? 三人の中で一番早く動けてたし、殴ったり蹴ったりの威力が凄まじいから、かなり苦戦すると思う。今のところ対応策はちょっと思い付かないかな。でもまぁ、お父さんがどうしてもっていうなら、あのお姉さんは僕が対処してあげてもいいよ」
圧倒的に経験値が不足している、否、無に等しい対象から、的確に自分たちの魔術の
それでも怯まず臆さず殺意を高めていく。
「おいお前ら。言うまでもねぇけど、手を抜く余裕なんて一切ないからなこの状況」
「こんなガキっころにあぁまで
「こればっかしはジジィに同意だな。まずはてめぇを、うちら三人の
下級魔術師では生涯かけても会得し得ない、詠唱不要の魔術――通称、
両者は三度、激突する。
Death×By×Familia 宮園クラン @miyazono-9ran
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