第3.5話【villains elegy-アクニンドモノバンカ-】(5)
「ッ!? 来るな
状況をよく呑み込めていないまま姿を現した息子へと、
しかし
「遅ぇ」
彼女は一瞬で
「わっ。わわっ。お姉ちゃん、だれ?」
不意に両肩を抱き寄せるように
「おい、ショーイチ。こいつも
「まぁまぁ
「やめろ! 息子は関係ないだろう! さっさと解放しろ!」
「ハァ? てめぇ自分の立場がわかってんのか? わかってたらそんな言い分は吐けねぇ、つーことはわかってねぇっつーことだ。じゃあわからせる必要があるよな? わからせるためにうちがどうするかっつったら――」
こうする訳だと言いながら、
「
銀色の指輪で埋め尽くされた
「……わーったよ。はいはい、やめたやめた。もうしねーからさっさと解いてくれねぇかな、これ」
「この馬鹿ゴリラ女。初めっから素直にそうしろ。相手はまだ子供なんだぞ? 無駄に怖がらせる必要なんてないだろうが」
罵倒されたことに対し
「やぁ。驚かせてごめんね。ぼく、怪我はないかな?」
相手を安心させようと、膝を折って
彼は何も特段子供が好きな訳では無い。
流石に実子を人質にされたならば、
「ねぇおじさん。あのね、変なにおいしてくさいし、そのお手てすごく気持ち悪いから、どっか行ってほしいかも。おぇ~。おぇ~~!」
鼻をつまみながら吐く素振りを見せる
「……………………」
「……あの、息子に悪気は無いんです。とりあえず気の済むまで謝るし、金で解決するなら出せるだけ出すから、その……早まらないで欲しい――」
ボキリッ、と。
「あっ……う、あ……あぁあ……」
喉の奥底より、意味のない音を漏らす
「おーおーおー。手が早いのぅ」
「改めて認識させられるんだが、ショーイチ。てめぇほんと狂ってんのな……。うちがやろうとしたことを止めた上で自分で殺るとか、サイコパスにも程があんだろ」
呆れる
「くさいだぁ? 気持ち悪いだぁ?? ハァ……ハァ……ッん舐めやがって……クソガキがぁあアぁああぁああア!!!」
両腕の動きと連動し、バツンッバツンッと鞭を叩きつけるような風切り音とともに、既に事切れているであろう
そんな見るに堪えない残虐行為が1分ほど続いた後、ようやく
「ふぅ~~。さぁて。気分がすっきり晴れたところで、我が子を失った父親はどんな具合なのか見て見ましょうかねぇ」
すこやかな笑顔と共に、未だ宙へと縛り付けられている
彼は
「まずいぞ……こんなパターンは初めてだ……不意の事故ならまだしも……明確な敵意を受けて死んでしまった場合……どうなるんだ……?」
「
「状況を整理しよう……俺は直接手を下していないが……しかし、原因となった当事者には変わりはない……であれば、俺も含まれるのか……? 分からないが、はたして今回は止められるのか……」
「先程から何をおっしゃっているのです? 家族を失った悲しみから、気でも触れてしまいましたか?」
「いや、気は確かですよ。ちゃんと自我はあるし、状況も分かっています」
目の前で我が子を惨殺されたとは到底思えないぐらい、
「でもね、だからこそ私は怖いんです。過去息子は十一回程死んでいますが、その度に訪れる凶事というか
「ちょっと何を言っているか分かりません。やはり現実を受け止め切れず、狂ってしまったのですね」
「もはやそんな問答はこの際無意味なんですよ。ほら見てください、そこにある息子の遺体を」
「これは?」
「あぁん? んだよこれ」
「おや? 死体がなくなっとる」
「悪い事は言いません。この場からすぐに離れるのをおすすめしますよ」
「と言っても、もう手遅れでしょうけど……」
『ヲォオオォォオオォオオオォォオォオォォオオオオ』
大気を震わす獣の咆哮を轟かせながら、殻を突き破ったソレは出現した。
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