冬
灰色の世界に足を落とす。
お世辞にも綺麗とは言えない雪があたりに広がって全てを覆い隠していた。
もう疲れたな、と吐いたため息が白く形付いて空に昇る。
春は目まぐるしい環境の変化に押しつぶされて、夏は身を焦がすような熱と疎ましい視線に撃ち抜かれ、雨に飽きた頃にはもうこの何の色も無い季節が僕を襲って来るんだ。
僕は冬が好きだ。春のように陽気で新しいことに足を踏み入れなくて済むし、夏みたいに半袖を着て熱気に当てられなくてもいいし、秋のように移り変わる景色に心を痛めなくてもいいから。
遠く向こうに水平線が見えた。足元には雪と砂の混じった薄汚い地面がずっと広がっている。
「結局、僕には何にもなかったなぁ」
また一つ 、白く形付いた生が昇っていった。
四季 薊 @Thistle_misanthropy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます